リモートワーク廃止の流れは経営者の支配欲求? 日本企業が「アマゾンに続け!」となるのは危険

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アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは、今回のリモートワーク廃止について、「私たちは新型コロナ拡大前のように、オフィスに戻ることを決めた。社員の学習や連携、企業文化の強化などを容易にするためだ」と理由を説明しています。

しかし、この説明を額面通りに受け取ることはできません。アマゾンや大手IT企業は、近年、社員が急増したことに対応して、大規模なリストラを繰り返しています。また、アメリカでは、本社を移転して転勤に応じない社員をクビにするというのが常套手段です。

そのため、今回のアマゾンのリモートワーク廃止は、「出社が嫌ならどんどん辞めてくれ」という一種のリストラ策だと、アメリカ国内では理解されています。

また、リモートワークを廃止したIT企業の多くが、リストラをする一方、有望な社員には例外的にリモートワークを認めています。アマゾンのニュースで、リモートワークが一気に消滅してしまうかのような印象を持ちますが、アメリカではリモートワークは引き続き重要です。

「アマゾンに続け!」は危険

アマゾンのリモートワーク廃止を聞いて、日本でも、「ならば、わが社も後に続こう!」と前のめりになっている経営者が多いかもしれません。しかし、これは危険な発想です。

コロナ前まで日本の職場では、社員同士が膝を突き合わせて仕事をすることを前提に、非効率な業務運営をしていました。それが、コロナ禍のリモートワーク導入で、マニュアル化・メールでの伝達・DXなど業務改革が大きく前進しました。

ただ、ジョブ型への転換がなかなか進まないように、改革は十分ではなく、多くの企業で非合理的な業務運営が残っています。リモートワークを縮小・廃止すると、元の非効率な業務運営に戻ってしまうのではないでしょうか。

また、現在、多くの日本企業は、深刻な人手不足に悩まされています。人材採用、とくに中途採用では、著名な大手企業でも大苦戦しています。アマゾンと違って、リストラどころではありません。

転職希望者、とくに若年層や子育て世代にとって、リモートワークで柔軟な働き方をできるかどうかは、重大の関心事です。リモートワークを縮小・廃止するどころか、むしろ拡大し、人材採用のアピール材料にすることは考えられないでしょうか。

経営者は、「アマゾンに続け!」とリモートワークを縮小・廃止する前に、自社の業務と人材を冷静に見つめ直す必要がありそうです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/takeshi.hioki.10
公式サイト:https://www.hioki-takeshi.com/
 

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