「こじはる」ブランドを買収した、30歳社長の思惑 yutori社長「細部に神を宿らせているブランド」

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――上場してもうすぐ1年、投資家からのプレッシャーは感じますか。

自分たちも事業を伸ばしていかないといけないというプレッシャーがある状態でやっているから、別にそれと変わらない。

むしろ、毎日値段を付けられることでインセンティブが働くじゃないですか。僕はプロデューサー的な思考が強いんで、いろいろな人に見られる中で自分たちがどうプレーしていくかというところに面白みを感じる。上場しているか否かでダイナミズムが全然違う。

とくに個人投資家はすごくちゃんと見てくれている感覚がある。YouTubeとかでの発信をチェックして、僕らの思いや考えをくみ取ろうとしてくれている。上場して悪かったことはとくにないですね。

コスメでも「めっちゃいけるじゃん」

――M&Aだけでなく、コスメなど事業領域も拡大させています。この先、アパレル企業の枠にはとどまらない?

Z世代とゆとり世代に対して、アパレルを軸に、買うこと自体が楽しいと思える商品を包括的に展開していく、っていうところかな。今後の大きな転換としては、メンズからレディスに行くだろう。アパレルとコスメを含めた嗜好品としてのマーケットは、メンズよりレディスのほうが大きい。

yutoriの売り上げは今でこそレディスとメンズが半々の割合だが、創業時はZ世代のメンズストリートから始まり、メンズで数字も伸ばしてきた経緯がある。だから今回レディスの「Her lip to」が加わるのは、かなりのターニングポイントだ。

コスメでは、他社と協業して開発した「minum(ミニュム)」で手応えとポテンシャルを感じた。洋服は同じ商品を繰り返し買わない商材だが、コスメは機能があれば基本的に繰り返し買ってくれる。

これまでやってきた商品開発やブランドの立ち上げを他業種でも再現できたので、「めっちゃいけるじゃん」っていう感覚ではある。新しい土地に入って、その土地の中で新しい芽が出つつあるので、どんどん種をまいて収穫できるなって。

――リーダー・プロデューサー職に特化した採用を始めるなど、人材戦略も独特です。

なんとなく「yutoriっぽい人」というのがあって。好きなものがあっても、マイノリティになった哀愁みたいなものを乗り越えてきた強さを持ち合わせた人がほしい。

片石貴展(かたいし・たかのり)/1993年生まれ。明治大学商学部卒業。2016年アカツキ入社。2018年4月に大学の同期らとyutoriを設立、社長を務める(撮影:尾形文繁)

そうした若者=はぐれ者みたいな子たちが継続的に取れている感覚はあるが、その若者の荒削りの才能に再現性を持たせるのがプロデューサーで、それを採用・育成するのが難しい。若い世代を中心としたクリエーティブな組織にどう継続性と再現性を持たしていくのかという問いは、今の時代にすごく刺さる。

日本のファッション業界はデザイナー社長が多いが、クリエーションしながら経営もできる人なんてそうそういない。例えば音楽事務所はプロデューサーとアーティストが別で、ファッション業界もそうあるべきかなと。

自分もクリエーティブは理解できるけど、ブランドをやっているわけじゃないし、経営を7~8割くらいの感覚で成立させている。

けど、別にみんながどうこうというより、自分たちがいい場所にいることが大事。自分はプロデューサーをプロデュースして、対外的には「いい大喜利」をして、規模拡大を続けていきたい。

井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

自動車業界を担当後、現在は専門店やアパレルなど小売業界を担当。大学時代は写真部に所属。趣味は漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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