さらに、中国系航空会社との競争激化が追い打ちをかけた。中国系航空会社はロシアの制裁対象ではないため、中国とヨーロッパを最短距離で結ぶことができる。ヨーロッパ系航空会社は、所要時間と運航コストの両面で勝負にならないのが実情だ。
それだけではない。中国発着の国際線の旅客数は、現状ではまだコロナ前の水準まで回復していない。そのため、「中国系航空会社は保有する大型旅客機を持て余している」と、ある業界関係者は指摘する。
航空会社にとっては、あえて運賃を下げてでも旅客機の稼働率と搭乗率を上げたほうが、余剰機材を遊ばせておくよりも損失が小さい。中国系航空会社がヨーロッパ路線の増便と価格競争に走ったのは、その意味では当然の経営判断だった。
欧州系のロビー活動に懸念
だが、中国の航空業界内にはここにきて新たな不安が芽生えている。中国路線の縮小に追い込まれたヨーロッパ系航空会社が増えるとともに、中国系航空会社への風当たりがヨーロッパで強まりかねないことだ。
「ヨーロッパの航空会社はロシア領空から締め出されているのに、中国の航空会社はそうではない。これは不公平な競争だ」。KLMオランダ航空のマルヤン・リンテルCEO(最高経営責任者)は10月初旬、現地メディアの取材に対してそう不満を漏らした。
こうした状況について、ある中国の業界関係者は次のように懸念を示した。
「ヨーロッパ系航空会社がEU(欧州連合)に対するロビー活動を強めれば、EU各国(の航空当局)が発着枠の制限などさまざまな手段を通じて、中国系航空会社に圧力をかける可能性が否定できない」
(財新記者:鄒曉桐)
※原文の配信は10月12日
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