北海道新幹線、なぜ「1日10往復」だけなのか

衝撃の少なさに地元民も落胆

地元では静かに落胆が広がっている。「10本しかない東京発直通の指定席を仙台までの乗客に買い占められたら困る」「新函館北斗駅の時刻表は1時間1本以下」という具合だ。東京直通10往復という数字が一人歩きしている点について、函館商工会議所地域振興課の永澤大樹課長はせめて臨時列車枠も含めて東京直通最大14往復という表現で発表してもらえれば」と祝賀ムードが冷え込む懸念を語っている。

どうして「10往復」なのか?

詳細については正式発表を待たなくてはならないが、この「直通10往復」という厳しい数字にはいろいろな背景が考えられる。

一つには、青函トンネル区間を共用する貨物列車のダイヤをできるだけ乱さないためという問題だ。そのために既存の「白鳥・スーパー白鳥」の「スジ」に新幹線を乗せることとなり、結果的にほぼ同じ本数となったという要因が考えられる。

本州―北海道間の大動脈として、またJR貨物の屋台骨として首都圏と北海道を結ぶコンテナ貨物列車は毎日約23往復が走る。そのJR貨物は、新幹線との青函区間共用を前提に、交流2万5千ボルト/2万ボルト切り替え式の強力な新型機関車EH800形を導入しつつあり、すでに納車が始まっている。さらに言えば、新幹線の開業後には深夜の点検時間を確保する必要も出てくる中、青函区間に新幹線を通す「スジ」はそれほど多くは引けないということなのだろう。

二つ目としてはニーズの問題だ。東京から新函館北斗が約4時間というのは魅力だが、新駅は函館市街地からシャトル電車で18キロメートル離れた位置にあり航空との競合では不利になる。また、青函連絡というのは閑散期と繁忙期の季節変動の大きい路線でもあり、貨物のダイヤを圧迫してまで乗車率の低い10両編成の「はやぶさ」を毎日多くの本数走らせることはできないだろう。

この「東京直通10往復」という問題は、JR北海道の経営方針の変化を反映しているという見方もできる。当初JR北海道としては、新函館北斗開業時には、この新駅を起点として道内の特急列車網を再編するという構想があった。その切り札は「キハ285系」という「ハイブリッド振り子車両」の導入であり、これによって「新函館北斗=札幌」が3時間を切ることとなり、南千歳乗り換えでの十勝・帯広方面への高速移動など様々な可能性が広がるはずだった。

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