その結果、スムーズに仕事ができ、離職率も下がる。こういう価値を、僕は「being(ありのまま)の価値」と呼んでいます。ただ「いる」ことに価値がある人って、組織には必ずいるのではないでしょうか。
問題はこの「being」の価値を、自己申告型給与制度の中でどうやってくみ取ればいいのかということ。なぜなら、この価値は自己申告しづらいから。当人が、私には「beingの価値がある」なんて言いにくいでしょうし、本人が自分の価値を自覚していないこともあります。
仕事はふつうにちゃんとやる。でも仕事内容や役割はそのまま変わらない。
そうなると、うちの自己申告型給与制度では給与が増えにくいわけですが、その人自身に変化はなくても、周りにいる人がいい方に変わっているのであれば、スキルや実績と同じくらい、いやそれ以上に「beingの価値」も評価していきたいんです。
「beingの価値」の位置づけとは
製造にいるO君は、あまり積極的に新しい取り組みの提案をするタイプではなく、やらないといけないことをコツコツ真面目にちゃんとやる。そんなタイプです。
彼は希望給与申告額も控えめです。なんなら本人に任せていると「ステイ」で申告してきたりします。
しかし、製造現場において、彼はすごく大きな存在です。彼はとにかく温和で、場の空気を悪くしない。彼がいるだけで、場が明るくなる。機械にも詳しいので、故障してうまく作動しなくなったときでも、彼がいると、皆は「なんとかなる」と安心できるそうです。
新人や若手にとっても、彼の存在は大きな支えになっています。何か困ったときも相談しやすく、対応もていねいで優しい。年齢や社歴や立場などで態度を変えたりせず、皆に同じ対応ができる。パートの年配の方からも人気が高く、周りから絶大な信頼を得ています。
彼自身が何か新しい取り組みをしていなかったとしても、彼の存在が、その場の人たちの安心感につながっているのであれば、新人が入ったり、人が増えたりしたときに、必然的に彼の価値は高まっていると言えるのではないでしょうか。
自己申告型給与制度に限らずですが、こういう人の存在や価値は、企業がきちんと取り上げて評価することは難しいわけです。
でも、「beingの価値」をないがしろにしていると、それは少しずつ歪みとなり、周りの人たちのパフォーマンス(「doingの価値」)を下げてしまうことになるんじゃないかと思うのです。
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