「携帯ショップの王者」買収が映す通信業界の苦境 "官製値下げ"が転機に、将来はさらなる再編も

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「近年、携帯販売代理店事業を取り巻く環境が激変し、通信事業者から携帯販売代理店に求められる役割や期待も大きく変化している」。ティーガイア公表のリリースによれば、こうした市場認識から、筆頭会社の住友商事がベインなどに売却の打診を始めたのは2023年5月下旬頃だった。

ティーガイアの売り上げの8割はモバイル事業が占める。同時期に公表された2023年3月期の営業利益は前期比33.8%減の69億円。2期連続の大幅減益となり、2年間でおよそ半減した計算となる。

ティーガイアの業績推移

この数年、業界を直撃していたのが、官製値下げの影響だった。

通信業界が転機を迎えるきっかけになったのは、2020年秋の菅政権誕生だ。菅政権は、公共の電波で事業を運営しているキャリアが寡占市場を形成し、携帯料金が高止まりしていた点を問題視して、各社に値下げを要請した。キャリア側は、メイン、サブブランドでの利用料金を引き下げるとともに、「ahamo」(ドコモ)といったオンラインで申し込みが可能な格安プランも次々と導入した。

官製値下げがもたらした“副作用”

ただ、値下げが消費者に恩恵をもたらした裏側では、販売代理店に対する「副作用」も起きていた。

低廉な料金プランが普及した結果、キャリアの通信収入は下押しされ、キャリアからの手数料収入に依存する代理店にしわ寄せが広がった。オンライン手続きの普及もあり、リアル店舗の重要性も相対的に低下。キャリア最大手のドコモは2022年にショップ数を約3割削減する方針まで掲げ、業界に衝撃が走った。

国内携帯電話端末の総出荷台数

官製値下げを抜きにしても、業界では端末販売が縮小傾向にあった。消費者にスマホが広く普及して新規獲得が鈍化したことに加え、端末の高機能化や円安による価格高騰で、消費者の買い替え期間が長期化したためだ。MM総研によると、2023年度の国内携帯電話端末の総出荷台数は前年度比16.4%減の2668.5万台と2000年度以降最少で、今後もしばらく停滞が予測される。

ティーガイア関係者は「10年前から将来的に成熟期が来るのは見えており、モバイルに依存しない会社を目指していたが、ここ数年、想定よりも市場変化のスピードが速かった」と振り返る。

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