「携帯ショップの王者」買収が映す通信業界の苦境 "官製値下げ"が転機に、将来はさらなる再編も
市場環境の変化を踏まえ、ティーガイアも店舗や人員の整理といったコスト削減を進めてきている。キャリアショップ数は今年6月時点で994店舗と、2021年3月時点(1217店舗)と比べて2割弱減少した。今年5月には45歳以上の社員を対象にした希望退職を募ると発表し、募集していた「200人程度」を大幅に上回る約240人が9月末で退職した。
コスト削減策も通じ、2025年3月期の営業利益は前期比9.3%増の88億円と増益を見込む。ただ、「値下げ前」の利益が安定的に150億円前後だったことを踏まえると、依然として停滞状態からは抜け出せない。
ショップ運営においては、アクセサリーなどの独自商材の併売や、荷物預かり場所としての利活用を進めるなど新たな知恵を出してきたが、成長戦略として決定打に欠けるように見え、手詰まり感も漂っていた。「初期から業界に参入し、右肩上がりで成長していた会社である分、意識を切り替えられないまま、成熟市場への対応が遅れた」(ティーガイア関係者)。
買い手候補にノジマが取り沙汰されたが…
苦境が続く中、TOB発表前から業界内ではティーガイアの買収が噂されてきた。買い手候補として一時取り沙汰されたのが、ノジマだ。
ノジマの本業は家電量販店だが、コネクシオをはじめとする携帯販売代理店を次々と買収し、今では代理店業界2位の地位を築いている。さらなるM&Aにも意欲を示し、コネクシオ買収時に野島廣司社長は東洋経済の取材に、「携帯ショップは成熟市場だが、成熟市場で伸ばせるノウハウがあるから、買収した。この厳しい業界の中で生き残れる会社は当社だけではないかと思っている」と自信をのぞかせていた。
しかしふたを開けてみると、ティーガイアが売り先に選んだのは事業会社ではなく、PEファンドだった。
通信業界に詳しいMM総研の横田英明副所長は「ノジマもティーガイアを欲しがっていたと思うが、(取引先の)キャリア側が、特定の代理店に店舗運営が集中するのを嫌がったのではないか」と分析する。ショップ運営の大部分を特定の代理店が担うことになれば、キャリアにとって交渉力低下が懸念されるというわけだ。結果として、ノジマ主導の巨大再編が実現されることはなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら