キオクシア「上場塩漬け」で深まる2つのリスク NAND価格は再び下落基調、深まるファンドの苦悩

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実際の算定には、将来獲得する見込みのキャッシュフローを現在の価値に換算したDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法が使われる。だがこれには複数の仮定が必要となり、計算も複雑だ。

そこで、キオクシアが上場した際の時価総額の大まかな目安になりそうなのは、ライバルメーカーのPBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)といった株価指標を当てはめることだ。ただ「時価総額が純利益の何倍で評価されているか」の指標であるPERをそのまま当てはめるのは難しい。メモリー業界は市況の波が激しく、純利益のブレ幅が大きすぎるからだ。

そこで一つの目安になりそうなのは、時価総額が純資産の何倍で評価されているのかの指標であるPBRだ。

5年度累計の損益は赤字

メモリー業界は、キオクシアに加えて韓国のサムスン電子とSKハイニックス、アメリカのマイクロン・テクノロジーとウエスタンデジタルの5社寡占市場だ。キオクシア以外の4社は上場しており、足元のPBRは2〜2.5倍。これは、それぞれの企業の時価総額が、純資産の2〜2.5倍の範囲に収まっているということだ。

2024年3月末時点で、キオクシアの純資産は4783億円だった。仮にキオクシアへの株式市場からの評価がライバルと同様の範囲に収まるとすれば、純資産にPBRを掛け合わせて推定した上場時の時価総額は9500億〜1.2兆円程度となる。2024年4~6月期の純利益を加味しても、1.1兆〜1.3兆円程度だ。

単純計算ではあるものの、2018年に1兆円の値段がついた株主価値は大きく伸びたとは言いづらく、6年という投資期間を考えれば投資ファンドとしては上場してもさほどリターンが出ない状況だ。

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