牛丼チェーン「深夜料金」に不満の声が続出する訳 外食チェーンのインフラ化に我々は慣れてしまった

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こうして「社会のインフラ」としての牛丼屋はどんどん広がっていく。

1973年に吉野家がフランチャイズチェーンをはじめてから、すき家、松屋、なか卵などが続き、全国どこでも牛丼が食べられるようになった。当初は都心店を中心とする展開だったが、徐々にファミリー層も取り込みながら郊外店も生まれてくる。現在も牛丼屋全体の数は微増を続けている。こうした展開を経ながら、牛丼屋は「社会のインフラ」的なポジションを保ってきたといえるだろう。

実は近年では、牛丼チェーン各社も「社会のインフラ」であることを意識的に押し出している。

すき家を運営するゼンショーホールディングスは「食のインフラ」として店舗営業を行うことをホームページで述べている。あるいは吉野家も2020年にファミリーセットを開始する際、「人々の生活に寄り添い、“牛丼”という日常食を提供する社会インフラとして可能な限り食事を提供することが、吉野家が果たすべき役割だと考えております」と述べたのだ。

企業側もこうしたことを意識するぐらい、「24時間営業している牛丼屋」は私たちにとって「慣れた」ものになってきた。ある意味、牛丼の深夜料金設定は、公共料金の値上げのようにさえ、受け取られているのではないか。

牛丼屋は生活に馴染みすぎた?

牛丼屋がいかに日本人の意識に染み付いているかは、2010年代からネットスラングとして使われる「チー牛」という言葉にも表れている。これは、「牛丼屋でチーズ牛丼を食べてそうな男性」のことで、「オタク」「ネクラ」「陰キャ」を表す隠語。

実は、同じような属性の男性を表す言葉は世界各国にあるが、日本ではそれに「牛丼」の名前が冠されているのだ。例えば、韓国語では「淘汰男」というらしい。こうした単語に牛丼屋で扱われるメニューが登場するぐらい、日本人にとって牛丼屋が浸透しているのだ。

水道や電気が通っていることを意識しないのと同じように、私たちは知らず知らずのうちに24時間やっている牛丼屋を「ふつう」のものとして捉えている。

しかし、当然のことだが、社会が移り変わるとともに、24時間営業の弊害も出てくる。すき家で話題になった「ワンオペ」の弊害など、その歪みが徐々に明るみに出てきたのだ。

というより、そもそも深夜営業が前提になっている状況に無理があったともいえるかもしれない。

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