真剣に語られ始めた「AIブーム終焉のタイミング」 ウォール街を揺らす悲観アナリストの衝撃予測
2022年にChatGPTがリリースされると、テック業界はAIの到来をインターネットの黎明期になぞらえ始めた。この比較はコヴェロの注意を引いた。「それは誰もが支持するべきことではない」。失われた何百万という雇用を思い起こしながら、コヴェロはそう述べた。
AIビジネス創出のために、データセンター、ユーティリティ、アプリケーションに1兆ドルが費やされるというのが専門家たちの予測だが、コヴェロは、こうしたコストによって現実世界の問題を安価に解決することは不可能になると考えた。それがまさに、数十年前に数々のインターネット企業で起こったことだ。
20分の時間短縮でコストは6倍に
AIに関するゴールドマンの社内ワーキンググループのメンバーとしてコヴェロは、生成AIを使用してアナリストのスプレッドシートに企業の決算情報を自動で更新するサービスを評価した。コヴェロによると、このサービスによってアナリストは1社あたり約20分の時間を節約できたが、コストは6倍に膨れ上がったという。
コヴェロの懐疑論は社内に広まった。ゴールドマンの月刊調査リポート『トップ・オブ・マインド』の編集者で、AIに関する特集号を企画していたアリソン・ネイサンは、同僚の勧めでコヴェロと会った。
「約35分間、彼の語りと見解に釘付けになった」と言う。
ネイサンは『トップ・オブ・マインド』のためにコヴェロにインタビューすることにした。そのインタビューから31ページに及ぶ特集のタイトルが生まれた。「生成AI:過大な投資、過小な利益?」というものだ。
コヴェロは、半導体製造装置など高度な技術の中にはコストが上昇しているものがあることに言及、AIのコストが下がるという考え方に異議を唱えた。そして、AIの能力についても批判した。
「世の中に使い道がないもの、あるいは準備が整っていないものを過剰につくると、たいていは悪い結果に終わるものだ」
この特集は、『トップ・オブ・マインド』の12年の歴史の中で最もよく読まれたリポートの1つとなった。