真剣に語られ始めた｢AIブーム終焉のタイミング｣ ウォール街を揺らす悲観アナリストの衝撃予測

AI導入競争の初期段階で一時停止が訪れた格好だ。ハイテク業界には、パソコン革命やインターネット革命のときのように、技術の移行を実現するために多額の資金を投じてきた歴史がある。こうした投資は、評価が定まるまでに5年以上の時間を要した。

だが、現在51歳のコヴェロはハイテク業界の好不況を経験している。半導体アナリストとしてドットコムバブルの崩壊を目の当たりにし、同僚たちが職を失うのを見て心に傷を負った。

ゴールドマンの古株となった彼は、最近では、ゴールドマンが使うAIサービスを評価する社内チームチームに加わった。コヴェロが吟味したサービスは、コストがかかり、扱いにくく、「従業員を賢くするほどスマートではなかった」という。

ゴールドマン・サックスのアナリストのコヴェロ氏（写真：Victor Llorente／The New York Times）

「注意喚起は時期尚早」

ハイテク業界の歴史を理由に、コヴェロの注意喚起は時期尚早だと指摘する声もある。ゴールドマンからコヴェロのリポートが発表されて間もなく、同社で地政学アドバイザリー事業の共同責任者を務めるジョージ・リーは、AIが労働時間を節約し生産性を向上させる段階は近づいている、とコヴェロにメールで反論した。リーはコヴェロに焦るな、と促した。

「基盤技術のシフトがもたらす長期的な影響とは、その技術が改良されて、利用しやすくなり、より安くなるにつれて、アプリケーションが時間の経過とともに現れてくるということだ」。リーはメールについて、取材でそう述べた。

さらに詳しい情報を求める顧客の要望を受けてゴールドマンは、リーが強気派としてAIに対する楽観論を述べ、コヴェロが弱気派として悲観論を説明するという、強気派と弱気派の討論会を非公開で開催するようになった。