橋下「大阪都鉄道構想」は、なぜ頓挫したのか

幻となった「なにわ筋線」と「関空リニア」

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梅田貨物駅(営業当時)

JR西日本は、2002年に北梅田~西九条間の別線地下化案を提案したことがある。建設距離は短いし、東海道貨物支線(梅田貨物線)の単線区間を解消できる妙案だと思うが、比較検討された形跡はない。南海はどのような立場だろう。なにわ筋線との接続地点が南海難波駅付近という案は結構な話であるが、建物が密集している繁華街で既存の高架線と接続するにはどのように設計するのだろうか。北梅田駅から新大阪まで、JRの貨物支線への乗り入れはどうなるのか。不確定要素が大きい。

地元大阪市の平松邦夫市長は、なにわ筋線の推進に慎重姿勢を貫いていた。大阪市も財政再建が重要課題であり、市民が興味を示さない地下鉄建設に巨額の資金を投じる余裕はない。橋下知事は「関西が発展しないのは大阪市が原因」といらだちを隠さなかった。

中央リニア前倒し開業で伊丹を廃止する

2009年12月、橋下知事は国土交通省成長戦略会議に「関空ハブ化で日本の成長戦略をリード(提案)」という文書を提出している。「東京圏だけでなく関西圏でも国際空港戦略が必要だ!」と訴えかけながら、

▽関空と神戸に『選択と集中』をし、伊丹空港は2035年頃に廃止
▽代わりに『関空リニア』を建設して都心アクセスの劇的改善

 

との自案を披露している。関空リニアとは、大阪都心と関西空港を7分で結ぶリニア新幹線のことらしい。

当時の文書をひもとくと、

▽JR東海のリニア中央新幹線の名古屋~大阪間の開業時期を2045年から2035年に前倒しさせる。
▽リニアができれば、羽田伊丹便は不要となり、伊丹空港の存在意義は低下する。
▽ゆえに、伊丹空港を廃止すればいい。空港跡地の売却益で関空リニアを建設すればいい。

 

という橋下流の解釈が披露されていた。

なにわ筋線についてもまた触れている。

北梅田~JR難波・南海難波間の建設費3000億円のうち、線路部分(1570億円)は国策として国負担で敷設してもらいたい。その間に設置される福島駅、中之島駅、西本町駅、堀江駅、南海難波駅の駅設置費(1440億円)は都市鉄道等利便増進法を準用して国と自治体、借入金で三等分する。そうすれば、地元負担が少なくて実現できる、というのが彼の主張だ。

面白いアイデアである。ただ、他の関係者は黙殺した。本人は、実現可能性の検証や関係機関との調整を終えたものではない「政治的メッセージ」であると文書の中で弁解しているが、個人的な思いつきをそのまま披露するだけでは、たたき台にもならない。

ここで注目したいのは、知事の関心が、関西空港の財政再建より、伊丹空港の売却益の使い方に注がれている点だ。「伊丹空港を廃止させて土地の売却益で関空リニア整備」という私案を披露しながら、「大阪の持つストックを組み替えることで、インフラ整備を進めて、大阪経済をさらに発展させる」と主張する。

この「ストックの組み替え」というロジックは、以降、橋下知事が経済政策を唱えるときのキーワードとなっていく。

次ページ橋下知事の経済政策と「ストックの組み替え」とのロジック
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