「第2の南北戦争」という「内戦」を回避できるのか 白人支配終焉と「憎悪の火に油を注ぐ」極右政党
カリフォルニア州もまた成功事例の1つである。1998年に白人が少数派になって以来(2004年にテキサス州が続いた)、カリフォルニア州は200%もの経済成長を遂げている。失業率は3%も低下した。1人当たりGDPは52.5%増加した。私がカリフォルニアに移住したのは1996年のことだった。メキシコ国境から北へ40マイルの町に居住し、白人比率わずか21%の大学で教鞭を執っている。日々私は心躍るヴィジョンを目にしている。学生は熱意に溢れ、移民は勤勉だ。
ただし同州の移行にあたっては、燃えるごとき反発を避けえなかった。1994年、未登録の移民が医療や教育など公共サービスの受益を禁ずる「わが州を救え」なる提案187条項を可決したのである。移民阻止、非正規滞在の処罰を目的とする大規模法案を承認した現代初の州法となった。共和党のピート・ウィルソン知事は、移民による越境を大々的にアピールする広告を展開するなど、187条キャンペーンを推進して、再選に成功した。ウィルソンこそがカリフォルニアの民族主義仕掛人だったのだ。白人の心に巣食う恐怖心を利用し、刑事的厳罰政策に踏み切ったのが勝利をもたらした。少数派人口が増加するほどに、白人至上主義への脅威は増していき、白人からの反発は雪だるま式となる。
多から1へ
だが、マイノリティが増加していくと事態は変わっていく。マイノリティのほうが政治力を持つようになると、白人のみならず、黒人や移民にも利益のある政策が採用されるようになるからだ。州内の授業料、不法滞在者への運転免許支給などバラエティ豊かなものとなっていく。教育費の大幅増加や、刑務所数の大幅減少も手伝って、あらゆる住民福祉の満足度が向上した。30年足らずの間に、同州は反移民の看板を捨て去り、移民とインクルージョンの先進政策州へと変貌している。
ただし、カリフォルニア州にいまだ課題は少なくない。ホームレス数は全国の4分の1を占め、所得格差も4番目である。近年アジア系高齢者が襲撃される事件が多発している。ユートピアからはほど遠い。それでも、広く人種を受容するカリフォルニア州の来し方を見るならば、そこには未来への可能性がある。
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