Apple Watch"10年目"の刷新が示唆する今後の姿 ヘルスケア機能の進化と日本市場での展開加速の理由

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言い換えるなら、アップルにとっても今後の成長余力がさらに見込める製品だ。そして、Apple Watchは、ほかのスマートウォッチと異なりiPhoneとの組み合わせでしか利用できない。すなわち、アップルブランドの製品の価値を高めるうえでも、極めて重要なのだ。

ディスプレイと装着感の"要"となる要素を変更

アップルは過去において第3世代と第4世代の間に大幅な設計の変更、形状の刷新を行った。以降、第9世代までの間はメカニカルな設計はほぼ変更されず、Apple Watchの全体を覆う"高級ケース"市場を生み出した。

しかし、今回は形状が久々に変更された。従来は、ジルコニアで作られたバックケース、すなわち裏蓋を取り付ける方式だったが、センサー部の一体部品を除き、裏蓋全体をアルミとしたうえで、その接合部をプラスチック素材で埋める処理が施された。

Apple Watch
これまでも薄型化されてきたが、Series 10では構造から見直された(写真:アップル)

この設計手法はiPhoneでも使われている。アンテナの埋め込みと金属ケースを薄いデザインで実現するための手法だ。アップルはこれにより1ミリの薄型化を可能にしたと話している。もちろんその言葉に嘘はないのだが、装着感の向上はもっと細かな設計の工夫によって行われていた。

まず、よく見るとストラップの取り付け溝が、以前はほぼ中央だったのが裏蓋により近い位置に移動している。これによりストラップと本体の接合部と手首の間の隙間が小さくなった。密着度が向上し体感的にも判別できる装着感の向上につながった。

無論、手首の上に装着して、1日を過ごしたときの1ミリの薄型化は決して小さなものではない。フィーリングの向上は明らかだ。

加えてステンレスを廃止し、チタンを採用したモデルが登場した。以前からチタンモデルは存在していたが、今回は特別なエディションではなく、ステンレスの置き換えとして通常モデルの中に組み込まれている点が異なる。

このチタンモデルは、丁寧に磨き上げたうえで、ダイヤモンドライクコーティングを施すことにより、深みのあるグロス仕上げも実現している。そのうえで、ステンレスからの変更により、より軽量なモデルに仕上がった。

およそ10年前、Apple Watchを最初に提供したとき、彼らは高級腕時計文化をリスペクトすることを示すため、18金ケースのモデルまで用意し、伝統工芸的な美しいグロス仕上げの技術を持つサプライヤーと契約し、18金はもちろん、ステンレスケースも磨かせた。

もちろんそうした仕上げを好む一定層もいるだろうが、10年を経て、アップルは本質を見直し、Apple Watchを求めるユーザーがどのような製品を望んでいるのかを、理解したということだと思う。

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