開発者が明かす山手線「最新車両」導入の狙い いよいよ登場する新たな東京の「顔」

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現在の山手線の電車は、最初から量産車が次々入った。しかし、今回のE235系の1本目は量産先行車なので、2本目以降の量産車は遅れて登場する。

山手線に新しい量産車が入る時期は、プレスリリースには記されていないが、口頭での発表はある。JR東日本の本社運輸車両部長が、今年3月の完成車両の報道公開で、「量産車の導入は約3年後から開始する予定で、その後順次置き換えを行っていく」と述べた。水谷氏は、その後の量産車の導入については、山手線以外の路線への展開を含めて、まだ決まっていないと語る。

スマホアプリと連携

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荷物棚の上にもデジタルサイネージを設置し、車内からは吊り広告が消えた

今回の量産先行車の車内では、通勤電車でおなじみの吊り広告がなくなる代わりに、デジタルサイネージを増やした。デジタルサイネージとは、映像や情報をディスプレーなどに表示する広告媒体だ。山手線の電車では、ドア左上の液晶画面に表示する「トレインチャンネル」として、すでに実用化されている。今回の量産先行車では、さらに液晶画面を増やし、荷物棚の上の壁にも画像や映像の表示を可能にした。

この背景には、近年の利用者の行動と、車内広告の宣伝効果の変化がある。今は、車内で新聞や雑誌を読む人が減り、スマートフォン(スマホ)を見続ける人が増え、車内広告に目を向ける人が減った。今回デジタルサイネージを増やしたのは、より付加価値の高い情報を利用者に提供するだけでなく、スマホを見る人にも振り向いてもらう意図もあるそうだ。

では、今後は車内から吊り広告が消えるのか。水谷氏は、吊り広告をなくしたのはあくまでも試験的だと語る。従来の紙の広告は、画面表示の広告と比べて、文字が多い雑誌広告などが読みやすいなどの利点があるので、まだ消えるわけではなさそうだ。

山手線では、乗客が持つスマホと広告を連携させる試みも、現在の電車ですでに始まっている。車内でスマホのアプリを起動し、チェックインすると、抽選でプレゼントが当たったり、ポイントがたまるなど、ITを駆使した宣伝方法も存在する。同車内でJR東日本公式の「JR東日本アプリ」を起動すると、各号車の車内温度や混雑率などが表示される。このしくみを、広告に応用しているのだ。

これらは、NTTドコモが開発した「Air Stamp(エアスタンプ)」の技術を使っている。「エアスタンプ」は、情報を音波信号で伝え、アプリと連動させるシステムだ。車内の音波装置から耳に聞こえない音を出し、それをスマホのマイクがキャッチするので、音が伝わらない車外では使えない。

このようなITを駆使した試みは興味深いが、山手線がITを十分活用しているとは必ずしも言えない。たとえば、スマホの普及で需要が高まる公衆無線LANサービスは、山手線車内では未実施で、今回の量産先行車の資料にも実施に関する記述がない。一方、同じ東京を走るバスやタクシーの車内では着々と普及している。東京の鉄道で駅構内と一部の列車を除き実施例が少ないのは、大きな課題だ。

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