「米国株は大幅に下落、日本株も追随」となるのか 弱い製造業指標や求人件数急低下で高まる懸念
現在の株価は「マグニフィセントセブン」と呼ばれる時価総額の大きい非製造業によって牽引されていることを踏まえ、時価総額の大きい銘柄の影響を受けない「均等ウェイト版S&P500」と比較しても、やはり違和感は残存する。どちらの尺度でみても現在の株価は、製造業サーベイと整合しない高い水準にあり、不気味さを禁じえない。
では、そもそもなぜ、株価は製造業指標の悪化を無視するかのような水準にあるのだろうか。ひとことで言えば、「景気後退は回避できるし、もし景気後退が懸念される状況になれば、FRBが大胆な利下げに踏み切るので株価下落は大したものにならない」という楽観があるだろう。
求人件数の下抜けが懸念される状況に
もっとも「景気後退は回避できる」という点については、やや警戒が必要な状況になってきた。8月23日のジャクソンホール・シンポジウムでジェローム・パウエルFRB議長は「労働市場の一段の冷え込みは望みも歓迎もしない」と発言したばかりだが、前出の9月4日発表の7月JOLTS求人統計は明らかにFRBが「見たくない」データであったと思われる。
7月の求人件数は767万件と市場予想(810万件)を明確に下振れたうえ、6月の数値も791万件へと27万件も下方修正された。水準そのものは新型コロナウイルスの感染爆発前よりも高いが、この間の人口増を踏まえれば、決して多いとは言えない。
同時にFRBが重視する失業者1人あたりの求人件数は1.07へと急低下した。この数値は2022年3月に2.0を超え、求職者が引く手あまたの状況にあることを示したが、移民流入数の増加などによって労働供給が正常化するなかで、2024年4月には発生前の水準である1.22に回帰していた。
1.07という数値は、危険水域というほどではないものの、企業の採用意欲が減衰していることは明白であり、このところの低下速度から判断すると下抜けが懸念される状況にある。求人件数の低下基調と失業者数の増加基調が続いていることを踏まえると、求人倍率は早晩1を下回る公算が大きい。
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