アパレル高級ブランド窮余の策、乱立する低価格コラボ企画

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だが、低価格でも一定の品質を維持するファストファションなどが勢力を強める中、「セカンドラインの価格ではもはや消費者にお得感を感じてもらえず、客層の開拓は想定どおりに進んでいない」(国内アパレル幹部)。さらに安い商品を開発する選択肢もあるが、それでは採算が取れず質の悪い商品になりかねないうえ、安物を売ることによってブランドイメージが悪くなる可能性がある。

今のところは、ファストファッションに力を借りた低価格品のコラボにしか、活路を見いだせていないのが実情なのだ。

薄れるインパクト 問われる次の施策

とはいえ、コラボ商品による新規顧客の開拓も簡単ではない。

ファーストラインとの価格差は大きい場合で数十倍に及び、購入する客の所得水準にも開きがある。コラボ商品を買った客にファーストラインへ手を伸ばしてもらうためには、その価格差を埋めるだけの魅力を持った商品の開発が欠かせない。そもそもコラボは、「これまで何度も繰り返されており、業界内ではすでにインパクトは薄れている」(アパレル関係者)と、この先の効果を疑問視する声も出てきている。

岩崎上席コンサルタントは、高級ブランドがコラボで裾野拡大を果たすには、「単発実施ではなく、長期的、または定期的に実施し、検証をしないといけない」と言う。ジリ貧から抜け出すための道筋を作るには、もう一歩踏み込んだ施策を考える必要がありそうだ。

(鈴木良英 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2011年12月10日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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