新日鉄が譲れない理由、ブラジル・ウジミナス社争奪戦で辛勝

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実は新日鉄は08年、高炉6社などとブラジルの鉄鉱山の権益取得でCSNと提携した過去がある。8社で総額3120億円をつぎ込んだが、「予定した土地は2年経っても手つかずのまま」(関係者)。権益に詳しい市場関係者によると、「CSNの社長は移り気。鉱山開発が進むかも不透明だった」。結局、今年6月には権益を手放しており、CSNへの不信感は強い。

防衛策を模索する中、浮上したのがテルニウムの存在だった。新日鉄が取得株数を増やし子会社化する手もあったが、「ウジミナスはもともと国営企業で、日本が乗っ取ったみたいな話はまずい。共同経営方式を続けるのがいい」(新日鉄幹部)と判断。ブラジルでの資源ナショナリズム台頭を意識したようだが、アジアに製鉄所を新設する案も浮上しており、2000億円という金額も重かった。

争奪戦は一服したが、嵐が去ったとは言いがたい。レアル高に加え、中国製鉄鋼材流入で市況が軟化し、ウジミナスの11年7~9月期の最終利益は前年同期比で7割減少。高炉新設計画中止を決めるなど、見通しも厳しい。筆頭株主の座を死守した新日鉄にとって正念場はこれからだ。

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(山内哲夫 =週刊東洋経済2011年12月10日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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