台湾政界の「変人」が引き起こした一大醜聞の中身 政治とカネの問題が繰り返される台湾政治の暗部
2023年、現在の蒋万安市長が市議会で議員からの引き上げ疑惑の指摘に応え、専門調査チームを結成し調査を始める。翌年には台北地検が汚職などの容疑で捜査を開始し、柯氏も取り調べ対象者としてリストアップしたと伝えられた。
8月28日、地検は威京グループ主席の沈慶京氏と国民党籍の台北市議員である応暁薇氏を呼び出して取り調べ、翌29日に勾留を申し立てて面会を禁じると発表。そして31日、柯氏も逮捕、勾留申請が出されたが、9月1日深夜に申請は却下された。
幻だった「第3勢力」民衆党
8月29日の記者会見での柯氏の謝罪を受け、社会民主党所属で台北市議員の苗博雅氏は「『第3勢力』という看板は柯市の隠れ蓑ではない」とメディアで喝破した。
苗博雅氏は「ひまわり学生運動以降、二大政党とは一線を画した勢力として第3勢力という言葉が台湾政治に定着した。しかし、柯氏はその言葉を巧みに利用し、国民党も民進党もできないようなこと職をやってのけたのだ。もうたくさんだ」。
ちなみに逮捕前、一部メディアでは柯氏は台中市長選に打って出る可能性があると伝えられていた。現職の盧秀燕市長は、国民党にとって次期総統選での最有力候補と言われており、仮に打撃を与えられたら民進党に恩を売ることができる。
また、台中市は比較的若年層が多いとされる新しい都市であり、若年層に人気がある柯氏にとっては選挙を戦いやすいと考えられていたからだ。
一方で、民進党が徹底して非難しているのに比べ、国民党は党としては目立った動きを示していない。民衆党勢力の取り込みを狙っているのではないかとの分析もある。
しかし当局の捜査が複数の事件に及んでおり、イメージは最悪の状況にある。ここから挽回するのは至難の業というほかないだろう。
また、今後の展開によっては台湾政治史上、1、2を争うほどの汚職事件になる可能性もある。
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