北海道が提案、函館「新幹線アクセス線廃止」の愚 運転手不足なのに4000人超をバスで運べる?

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旅客列車のあり方が今後の議論の争点となるが、道が主導する協議会において先に廃止の方針が決定された長万部―小樽間については、深刻化するバスドライバー不足に加え、本来は廃止の対象とはならない輸送密度が2000人を超える余市―小樽間の廃止まで決めてしまったことから、バス転換協議が泥沼化し中断に追い込まれたことは2023年11月7日付記事(北海道新幹線「並行在来線」バス転換協議が中断へ)で詳しく触れている。

しかし、道が協議会の場で沿線自治体に対して提案した内容は、全路線を鉄道路線として維持した場合には30年間で744億円の赤字が生じるのに対して、函館―新函館北斗間のみを残してバス転換した場合には391億円の赤字。さらに、全路線のバス転換だと106億円の赤字で済むという試算だった。バス転換のルートについて道は、函館―新函館北斗、函館・新函館北斗―森、函館・新函館北斗―鹿部、鹿部―森、森―長万部の5つのルートとすることを想定。存廃の最終判断を2025年度中に行い、函館バスとの協議に入るというものだった。

赤字を膨らませる「印象操作」

30年分の赤字額を提示するのは、鉄道の赤字額がいかに膨大であるのかという印象操作を行う道のいつもの手法である。また、道の試算については、鉄道の経費を過剰に見積もっているとの有識者からの指摘もある。今回も費用便益分析などの多面的な評価は行われず、協議の場に函館バスは呼ばれていない。なお、函館バスでは深刻な労使紛争を抱えているうえに、ドライバー不足の影響などからほかのバス会社と共同運行している函館―札幌間を結ぶ高速はこだて号の便数半減を行っている。

道がバス転換を提案した函館―長万部間のうち、函館―新函館北斗間は、函館市中心部と北海道新幹線の新函館北斗間のアクセス路線として機能しており、輸送密度は4000人を超える。さらに函館市が函館駅までの新幹線の乗り入れを視野に調査を進めている区間でもある。並行在来線のうち先に廃止の方針を決めた長万部―小樽間については沿線のバス会社が代替バスの引き受けが困難だとして協議が中断に追い込まれた。函館―新函館北斗間の輸送密度は、このうちの余市―小樽間の輸送密度2000人をはるかに超え、函館―長万部間全線のバス転換が現実的ではないことは明らかだ。

ある地域関係者は「職員の無駄な労力と人件費をかけて意味不明な提案を沿線自治体に対して行う道の仕事ぶりは完全な税金の無駄遣い。北海道民を愚弄している」と怒りをあらわにする。

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