実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史
世界各国には、ここまで挙げた以外にもさまざまな軌間が存在する。さらに特筆できるものをいくつか紹介したい。
かつてイギリス植民地だったインドでは、1676mmという超広軌の線路が国土の大部分に張り巡らされている。これは重い貨物の輸送や長大な編成の長距離旅客輸送に適しており、隣接するパキスタンやバングラデシュの一部、スリランカでも採用されている。
インドはメーターゲージや狭軌鉄道も多かったが、1676mmへの改軌を急速に推進。主要幹線はこの軌間となっている。一方、日本の技術支援で建設が進む、いわゆる「インド新幹線」は日本と同じく標準軌を前提に工事が行われている。
アイルランドも独自の軌間
標準軌と異なる軌間としてよく挙げられるのは、前述したスペインの1668mm「イベリアゲージ」だろう。隣接する標準軌のフランスとの直通に手間がかかるため、日本では実用化に至っていないフリーゲージ(軌間可変)車両が古くから開発され、運用してきた経緯がある。
高速列車「AVE」などが走る高速新線は標準軌で造られているため、在来線だけが通るローカル都市などへの乗り入れのために国内でも軌間可変車両が使われ、中間駅にそのための基地も設けられている。在来線のほうが高速新線(新幹線)より軌間が広いという、日本とは逆のパターンだ。
このほか、大ブリテン島の西にあるアイルランド島の鉄道ネットワークは、1600mmという独特の軌間が使われている。イギリスやアイルランドの度量衡で5フィート3インチという規格で造ったものだが、たまたまメートル法では1600mmという「ちょうどの数字」となった。
アイルランド島の北側の一部は英領北アイルランドで、線路はそこまで延びているが、「標準軌の故郷」とも言えるイギリスの一部ながら、まったく異なる軌間の鉄道が走っているという事実が興味深い。現在この軌間は「ケルティックゲージ」と呼ばれている。
鉄道の軌間の違いは、単なる技術的選択にとどまらない。各国の政治的戦略や、経済的背景が深く関与していることを改めて意識してみると興味深いものだ。
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