実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史
19世紀末期から20世紀にかけての欧州列強による植民地主義も影響している。前述のようにイギリスが植民地での鉄道敷設用に用いた「ケープゲージ」もその一例だが、現在でも顕著に当時のレール規格が残る例としては、旧フランス領インドシナ、つまり現在のベトナムやカンボジアに敷かれた1m幅の線路がある。
その寸法から「メーターゲージ」と呼ばれるフランスが敷いた線路は、一部が中国国内に延びていた(現在は廃線)。また、フランス植民地ではなかったが、同じ規格の線路がタイ、マレーシアを経て、シンガポールまで延びており、東南アジアでは一般的な軌間となっている。
しかし、軌間が1mとなると、線路設計や地盤を整備しても、運用できる実用的な最高速度は日本の在来線の一般的な速度と同様、おおむね時速120kmほどにとどまる。そこに登場したのが、中国の鉄道技術だ。
中国「一帯一路」も「軌間」の戦略?
中国は「一帯一路」の名の下に、インフラ輸出の拡大を通じ自国の経済成長を促進したいというお題目を掲げ、東南アジア地域との経済的つながりの強化や、自国領土からインド洋への進出経路の確保といった軍事的目標もあって、メーターゲージより大量かつ高速に輸送できる標準軌鉄道や高速鉄道の敷設を積極的に行っている。
具体的には、2022年12月に開通した「中国ラオス鉄道(LCR)」が顕著な例だ。中国からの乗り入れを前提に、ラオス国内区間も中国の鉄道と同じ標準軌で建設された。
さらに中国は、LCRを延伸する形でタイ、マレーシアとの鉄道リンクの完成を目指し、実際に両国で鉄道敷設工事を進めている。既存のメーターゲージ鉄道との接続を考えない形で建設を進めていることが気になるところだ。
こうして現在も、鉄道の軌間は政治的な思惑と切り離せない関係にある。
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