マルチ・スズキ以外にもインドには日本の名だたる企業が飛び込み、試行錯誤を重ねている。各企業の最前線をリポートする。
ダイキン工業|現地化で安売りせずシェアは断トツ狙う
日本国内で1年間に出荷される家庭用ルームエアコンの台数は約300万台。2030年度に1社単独でこれを上回る年500万台の出荷を目指しているのが、ダイキン工業のインド事業だ。
ダイキンの取締役で、インド事業を取り仕切るカンワル・ジート・ジャワ氏は「日本をはじめ世界各地で展開してきたノウハウを生かし、インドでも『断トツトップ』を狙う」と意気込む。
14億人の人口を抱えるインドだが、家庭用エアコンの普及率はダイキン推定で7%程度(世帯ベース)。普及率が9割を超えている日本や中国と比べて、まだまだ伸びしろが大きい市場だ。
それだけに、世界中のエアコンメーカーがインド市場に殺到している。中国の格力(GREE)はもちろん、韓国のサムスン電子、日本のパナソニックや米国のキヤリアなど大手がひしめき合う。
09年にインドに本格進出したダイキンは、家庭用エアコンで20%弱、業務用エアコンで60%以上(いずれも同社推定)とトップシェアを誇るまでに成長した。急成長を支えたのは2つの取り組みだ。
1つは徹底した現地化だ。インドは地域によって気候が大きく異なり、エアコンも5度から55度まで幅広い環境下で動作することが求められる。電力供給も不安定で、電圧は定格が230ボルトのところ、500ボルトの高電圧がかかることもあるという。