「女性が一生を賭けられる」会社と上司の条件 変わるべきは男のアナタだ

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確かに従来の「滅私奉公型男性社員」と比べると、会社としてはその活かし方に苦慮することも多いでしょう。ただ、こういった各自のライフイベントを踏まえた人材活用を身に着けることは、今後、男性や女性問わず介護を抱える部下が増えてくることを考えると、十分報われる経営的投資ですし、できなければ大方の社員の活用に困る、ということになるのです。

「今」だけではなく「少し先の未来」を見せてほしい

子育て、特に一人目の子育てを迎えようとしている、あるいは奮闘している女性に対してはぜひ、「今よりも少し先」をつねに見せてあげてほしいと思います。

父親としてのご自身の経験を引き出していただいてもかまわないですし、過去の部下の事例でもかまいません。目の前の育児や介護で、「今は」大変かもしれないけれど、それを理由に辞めてしまうことは最後の選択肢としてとっておき、「ほんの少し先」を考えてキャリアを積み上げていこう、と勇気づけてほしいのです。

たとえば冒頭の質問に対して、子育て期の仕事継続に対する不安を訴える女性に、「わかるよ」とその気持ちを受け止めることが必要です。そのうえで、周囲の子育て中の働いている女性などの例もだし、たとえばこんな風に相談にのるのはどうでしょう。

「育児の大変な期間は、ある程度限られることが多い。もちろん個人差はあると思うけれどそのあとお子さんの教育のためにも働き続ける20年という期間を考えて、辞める以外の選択肢は考えられないかな?」と。

事例を出し、根拠をそえて、最終的にはもちろん本人の判断を促すわけですが、これ以外にご本人がなぜ会社に必要か、ということを伝えることで本人のモチベーションが上がるはずです。

女性は責任感が強い人も多く、現在仕事で貢献できていない、周りに負担をかけてしまうので居づらい、と思うと、「私なんて辞めた方がいいのではないか」という考えにもなりがちです。しかし、会社としてそこまでキャリアを積んできた人を手放し、同じ能力とキャリアの人を採用し教育するコストを考えても、まずは慰留すべきケースも多いのではないでしょうか。

その際、上司から、なぜ彼女が会社にとって必要か、そして、ライフスタイルとの兼ね合いで悩んでいるのなら、それが一時的なものにすぎないかもしれないこと、今とれる対策、1年後に向けて考えられる手の打ち方、5年後どういう風に働いていたいか、など個別具体的にヒアリングを実施して、「今」だけに向いている彼女の目線を持ち上げることができる可能性があるのです。

過去、筆者自身は、自分にロールモデルがいない、という理由もあって、大企業を退職しました。でも、少し先を見通すことができたら、あるいは、今のような女性が働き続けるのが当たり前の世の中が見えていたら、やめなかったかもしれません。

小紫 恵美子 経営コンサルタント(中小企業診断士)

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こむらさき えみこ / Komurasaki Emiko

経営コンサルタント(中小企業診断士)。東京大学卒業後、1995年NTT入社。主に法人営業に従事し、在職中に中小企業診断士の資格を取得。結婚、退職後に出産・育児の10年の「ブランク」を経て、中小企業診断士事務所OfficeCOMを開業。女性経営者を中心とした中小企業のコンサルのほか、セミナー・研修講師、執筆活動などを行う。

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