巨象インドと「20年前の中国」共通点と大きな違い 日本企業のビジネスチャンスはどこにあるか

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デリー市内のユニクロ。店舗前を野犬が歩いていた(記者撮影)

今インド進出を考える日本企業の中では、インドの内需開拓を狙う向きが多数派だ。最初は輸出拠点にするために進出した中国とは、そこが大きく違う。

03年から合計15年もの中国駐在経験を持ち、現在はデリーを拠点とする中村伸吾・みずほ銀行執行役員インド営業部長は「20年前の中国には、日本企業のライバルになるような現地企業はそこまで多くなかった」と指摘する。

一方で現在のインドには、タタやマヒンドラ&マヒンドラなど、古くから自動車を製造しているメーカーが複数存在する。ほかの分野もしかりで、「日本ブランド」が圧倒的に強いとはいえない。

裾野産業も同じだ。今やスズキのインドでの現地調達率は9割を超えている。20年前の中国ではここまで地元企業は育ってはいなかった。だからこそ日系企業のチャンスは大きかったともいえる。

中国企業の新規投資は事実上締め出されているが、自動車でも家電でも、インドでは韓国やドイツなどのライバル企業との競争が厳しい。「3年で単年度黒字、5年で累損解消」といった、2000年代の中国では普通にありえた成功は期待しにくい。中小企業は慎重にならざるをえないだろう。

長期戦で臨む姿勢が必要

「03年当時の上海では、みずほ銀行でも新規口座を年数百件規模で開いていた。対照的に今のインドで勢いがあるのは、すでに進出している企業の再投資だ」(みずほの中村氏)。

インドの厳しい競争環境に耐え抜いた企業はそれなりに報われているようだ。ジェトロの調査ではインドに進出した日本企業の7割が23年度の営業利益を黒字と見込んでおり、この比率は中国の6割を上回る。

野村総研の郷氏は「デリーなど大都市圏の市場はインド市場の一部だが、それでも十分大きい。中国勢の参入障壁が高まっている今のうちに進出するのが得策だ」と話す。

選挙があるインドは共産党独裁の中国に比べてすべてがスローだ。かつての中国の高度成長が再演されるとは考えにくい。すべてに時間がかかることを覚悟したうえで、長期戦で臨む姿勢が必要だろう。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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