世界の工作機械メーカーは今後4分の1に収斂される、開発技術だけで製品バリューが決まる時代は終わった--森雅彦・森精機製作所社長


--瀋陽机床との交渉は進んでいますか?

瀋陽机床から鋳物を買ってくる話などは進んでいます。でも工場をつくる交渉は、資本バランスについてなど難しい面もあり、遅々として進んでいません。

■今後10年で業界は大きく変わる

--タイの洪水が業界に与える影響についてお聞かせください。

タイでは、森精機の機械で500台、業界全体では6000台が水没しているとされています。当社の場合、500台のうち150台分は、すでに修理・交換の依頼が来ています。水が完全に引いて現場に入って修理、撤去作業できるのが12月。来年の3月から4月くらいに、本格的にタイ向けに機械を出さなければならないかな、という感じですね。特需ということはないですけれど、その分の受注は、じわじわ入ってきているかもしれません。

--復旧過程で、(価格が安く納期の早い)台湾や韓国のメーカーに注文を取られるのではないか、と懸念する声も聞かれますが。

とにかく早く機械を持ってこい、というような荒っぽい商談の場合は、そういうこともあるでしょう。ただ、当社の機械を使っているお客さんは、台湾や韓国の機械を使いません。求めているものが違いますから。

--それでも、台湾や韓国の工作機械メーカーが脅威だという声は業界内にそれなりにあります。

台湾や韓国のメーカーが脅威だと言っている人は、おそらく、これまでヨーロッパやアメリカと取引をしてこなかったのではないでしょうか。そのような会社は今後、技術的についてこられなくなると思いますよ。

機械を作る技術もそうですが、ソリューションがどんどん複合化しているのです。(これからは)難しいワークを削る技術や、それによって鍛えられるエンジニア、サービスマンが必要です。台湾や韓国、アジアにしか駐在できない人たちが、ヨーロッパには行けません。たとえば日産メキシコ工場の仕事を請け負ったりとか、反対にアメリカ資本の海外工場を請け負ったりとかはできない。チャンスがなくなってしまうのです。

だから、10年経ったら大きく変わっていると思います。それなりに個性を持った会社は残るでしょうが、中途半端な会社はなくなってしまうでしょう。

■製造業が日本国内でできることはたくさんある

--今後の開発のコンセプトについて教えてください。

お客さんから見て使いやすい機械を目指すことです。びびり振動(切削中に工具が振動すること)がなく、各軸が滑らかに精密に動くなど、工作機械の基本性能をますます進化させます。

それから情報の一気通貫です。ワークの図面に基づいてプログラミングし、それに基づいて計測し、要求されている精度を出す。この工程を保証する仕組みですね。

さらに、モノの一気通貫。工程を集約したり、適切な提案をしたり。金属の使用方法や熱処理を含めた部分の開発。自動化提案も重要ですね。

--マーケットで力を入れていらっしゃるところは?

会社がこれくらいの大きさになってくると、あらゆるマーケットに力を入れねばなりません。自動車、建機、農機、航空機、一般産業機械。一般産業機械でも繊維機械や精密機械、水処理の機械など。そして医療、インフラ。超精密、光学、半導体関係、金型。これらすべてに取り組んでいきます。

--DMGと森精機を合わせると、工作機械メーカーとして世界最大規模になりますね。今後、強化すべき課題は。

ソリューション力と俊敏な対応力です。

たとえば、つい先ほど、コスタリカのお客さんから「24時間以内に補修パーツを送ると言っていたのに、届かないではないか」というメールをもらいました。コスタリカならまだしも、東京の周辺部でも、いろいろなことがある。納めた機械の主軸が1週間で焼き付いた、とか、そういうこともあるわけです。

--景気減速や円高など、事業環境の厳しい中、日本の製造業が日本国内でできることはありますか。

いっぱいあります。まず研究開発をちゃんとやること。製造工程の面でも、ムダ時間を完全になくせば、生産性を倍くらいに上げられる可能性があります。そういった地道な改善活動に取り組める国は限られている。言語や生活、文化的背景のほか、GDP(国内総生産)の大きさ、ある程度国内に産業があるということ、科学技術教育の歴史、忍耐強い株式市場、あまりにも拡散していない給与体系などが必要だと思います。平均賃金と社長の給料が20倍くらいまでだったら大丈夫ですが、100倍にも広がると、工作機械のような手先集約的産業は成り立ちません。

世界中の商品そのもののコストとデリバリー、ソリューションのコストとデリバリー、サービスのコストとデリバリー、人そのもののコストとデリバリー。それらすべてを改善改良し、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルをぐるぐる回していくセンターとしての役割は、少なくとも日本がベースの会社としてやらないといけないと思います。

(聞き手:小河眞与 撮影:今井康一 =東洋経済オンライン)

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