社員の可能性を見抜けない「無能人事」の哀しみ 人事は長期的に物事を見なくてはいけないのだが…

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たとえば、誰かが異動すれば、その補充人員を別の部署から持ってこなければならないかもしれません。誰かの採用を決定すれば、ほかの誰かを採用できないかもしれません。誰かの職位を外せば、モチベーションを下げ、周囲に悪影響をおよぼすかもしれません。そうしたリスクも踏まえた上で、人事異動案を策定し、決定者に決めてもらうのです。

決定権者とは、対象者の「人事権」を持つ人です。通常、人事権は直属の上司にあるとされていますが、その上司の人事権はそのまた上司にあるわけで、人事担当者が働き掛けるのは、本部長や部長といった人たちになります。あるいは最高位の人事権者は経営者ですから、経営者とのやりとりも必要です。誰がどのように「人事(採用や配置異動・任免など)」を決定するのかも、あらかじめ決めておかなければいけません。

長期的に物事を見なくてはいけない

このような人事フローのことを、狭義で「人事」と呼ぶこともあります。「4月の人事では…」といえば、4月に誰がどこに異動・配置となるかといったことを意味します。

4月に人事を行う場合、半年くらい前から自己申告による異動希望を募ったり、経営者や経理が策定する予算づくりに携わったり、人員計画(どこの部署に、どのような人材が、どれだけ必要なのかを決定すること)がないと予算をつくれないので、その策定にも携わったりします。そして2月には組織と、そこに配置する責任者を決めてもらって、その責任者と人事異動の交渉をしていきます。

これらの(狭義の)人事は、その時点だけのものではなく、中長期的な戦略に基づき、求める人物像を設定した上で、採用・育成・配置方針を決め、これらに基づく人員計画を策定し、これが採用計画、人事異動計画、育成計画の策定につながっていきます。

人事異動を決めるのは現場の管理職ですが、人事部門も人事異動案をつくります。管理職は基本的に今年と来年のことで頭がいっぱいです。新卒を採ったとしても、その人が30歳のときにどうしているのか、40歳のときにどうしているのか、先のことまでは意外と誰も考えていなかったりします。長期的に物事を見ているのは、ひょっとすると社内で唯一、人事だけかもしれません。だからこそ人事担当者は、長期的に物事を考える視点が重要になります。

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