あえて遠い時代と見る感性が大事--『昭和天皇と戦争の世紀』を書いた加藤陽子氏(東京大学大学院教授、歴史学者)に聞く

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大事な問題はつねに丹念に見ていかないと恐ろしい方向に動く。歴史の決定的瞬間、ポイント・オブ・ノーリターンは、まさに引き返せない地点として、そうとは気がつかない局面からすでに設定されている。それをどう止めるかが難しい。

──歴史を見る場合には、必須の感性があるとも。

あえて現在の自分とは遠い時代のような関係として見る感性が、未来に生きるための指針を歴史から得ようと考える際には必須だ。自国と外国、味方と敵といった、切れば血の出る関係ではとらえない。

昭和天皇は、空襲世代や原爆世代、さらにその子どもたちからは、何で戦争を早く止めてくれなかったのだと言われ、また若い層はあんなかわいいおじいちゃんを戦争責任者というなんてと言ったりする。もうこれは「神学論争」といってもいいが、大日本帝国憲法下の昭和天皇は、政治的人間であることを禁じられ、無答責の地位に置かれていたというのが国法学的な解釈になっている。

(聞き手・本誌:塚田紀史 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2011年11月19日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

かとう・ようこ
1960年埼玉県生まれ。東京大学大学院博士課程修了(国史学)。山梨大学助教授、スタンフォード大学フーバー研究所訪問研究員などを経て、2009年より東大大学院人文社会系研究科教授。専攻は日本近代史。著書に『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(小林秀雄賞)、『戦争の日本近現代史』など。

『昭和天皇と戦争の世紀』 講談社 2730円 422ページ


  
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