日本株は次の首相次第で再び停滞する懸念がある 円安と株高の追い風を生かせなかった岸田首相

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前出の記事でも述べたとおり、植田日銀総裁の発言をきっかけに、「日本経済にとって最悪のシナリオ」が意識されたことが、日本株急落と大幅な円安修正を引き起こした。日本の通貨当局による円高誘導政策が始まり、日銀が時期尚早な利上げを進める可能性が高まった。

日本の脱デフレへの試みが再び失敗して悪夢が訪れかねない懸念が台頭したのだから、株式市場がこうした反応を示すのは極めて合理的だ。

8月7日の内田真一・日銀副総裁の講演における「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません」との発言が、植田総裁の「利上げへの前のめり姿勢」とは異なると解釈され、日本株の反発をもたらす材料になったが、これは株価が金融危機時と同様の急落となったことを踏まえれば「至極当たり前」の発言である。内田副総裁の発言を吟味すれば、同氏の利上げへの道筋に関する見解は、植田総裁とほぼ同じだと筆者は考えている。

日銀の性急な金融引き締めリスクが高まっている

日本経済はほぼゼロ成長が続いている中で、インフレと賃金の好循環が止まっており、かつ需給ギャップがマイナスの領域にあるのだから、「金融引き締めをしすぎるリスク」に配慮しながら利上げは慎重に行うべきだ。

ただ、植田総裁だけでなく日銀審議委員の多くは「中立金利の下限である1%の政策金利を目指して、淡々と利上げしていく」と考えているようである。このまま金融市場が落ち着けば、日銀は10月の金融政策決定会合(30~31日)にも追加利上げを行い、結果的に性急な引き締めとなるのではないか。

さらに、岸田政権の退陣が、日銀による性急な利上げを後押しするリスクがある。8月14日、岸田首相は9月27日に行われる自民党総裁選挙に出馬しないと表明した。

こうした展開は十分想定されたことであり、サプライズではない。ただ、後継総裁の候補者と目される人たちのマクロ安定化政策に関する言及を踏まえると、2%インフレ安定と日本の経済成長を高めることの政策順位は高くないようにみえる。このため、通貨当局による円高容認政策は強まり、日銀が性急な利上げを続ける可能性はより高まりそうである。

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