日本株は次の首相次第で再び停滞する懸念がある 円安と株高の追い風を生かせなかった岸田首相

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ここで簡単に、2021年10月からの岸田政権の経済政策について振り返ろう。政権発足前には「新しい資本主義」を標榜して、所得分配強化や資産課税強化を考えていたとみられ、金融市場の岸田政権に対する警戒感は強かった。

実際には、金融資産増税は行われず、「新しい資本主義」は政治フレーズの側面が大きかったということだろう。また、「アベノミクスの転換」を岸田首相は考えていたようだが、経済成長を重視する政策を続ける必要性を官邸のブレーンなどが理解していたようにみえる。

次期首相も同じ轍を踏めば日本株の上昇は危ういものに

9月に終わりを告げることになった岸田政権期においては、コロナ禍からの正常化が徐々に進んだので、経済成長が高まる幸運な状況だった。

また、日銀の金融緩和によって大幅な円安が進むという、かなりの追い風が吹いていた。ただ「株高なのに円安の恩恵が広がらないのはなぜか」(2024年7月26日配信)で述べたように、家計部門に対する減税政策などがきわめて不十分で、開始時期も遅れたため、個人消費の停滞が続いた。この間、好調だったアメリカ経済と比べると日本の経済成長率はかなり見劣りした。

また、金融市場の観点でみると、円安の追い風が吹いたことが最大の要因だが、日経平均株価など主要株価指数は史上最高値を2024年3月、同7月に更新しており、この点ではパフォーマンスはかなり良かったと言える。東京証券取引所などが進めるガバナンス強化などの方針を許容、さらには新NISA(少額投資非課税制度)の創設で株式などの投資に対する税制優遇措置を拡大したことなどが株高を後押しした。

次の首相を決める自民党総裁選挙がどのような結末になるかは、このコラム執筆現時点(8月21日時点)ではわからない。現時点では個々の発言を論評することは控えたいが、有力候補とされる政治家のマクロ安定化政策に対する考え方は、根拠薄弱でかつ危ういものが散見されると筆者は警戒している。

岸田首相が国民からの支持を得ることができずに退陣に至ったのは、マクロ安定化政策が不十分だったことが大きな要因である。そして、冒頭で述べたように8月初旬の日本株急落の背景には合理的な理由がある。これらを理解できる政治家が次の首相とならなければ、日本株の上昇率は米国株を下回り続けるだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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