阪急電鉄「プライベース」乗りたくなる仕掛け ハイグレードの有料着席サービスが7月に開始
神戸線特急、宝塚線急行と並んで三複線に滑り出すと、やがて他線の列車をリードして中津を通過、淀川橋梁の渡河となった。客室内は全面的にカーペット敷きのために足の感触が柔らかいとともに、吸音性をもつため、鉄橋を渡る音は心持ち静かだろうか。十三に停車。京都側車室は全席が埋まった。おそらく大阪側の車室も同様と思う。
続いて千里線接続の淡路に停車。大規模な連立化工事が進んでおり高い高架橋がそびえているが、まだ桁が渡っていない部分も残る。以後は京都線特急らしい爽快な足取りとなり、阪急の路線上にあるOsaka Metro堺筋線の東吹田検車場を右に見たのち、続いて過日に報道向け試乗会でも訪れた正雀車庫を構える正雀を通過する。
試乗会で伝えられたプライベースの魅力
さてと、試乗会での取材成果を交えながら、プライベースのあれこれに目を向けてゆきたい。
客室は中央デッキを挟んで前後2室。座席番号は大阪側車室が1〜7番と若く、京都側は8〜14番の数字が続く。
旅行者としては大阪梅田から乗る機会が多いので感覚的に大阪→京都の向きを下りのように捉えがちだが、京阪間の路線はJRは言わずもがな、阪急京都線も京阪電車も京都→大阪方向が下りである。そのため阪急京都線の1号車は大阪梅田方先頭車で、京都行きでは座席番号も数字の若い方が後ろになるわけだ。
大阪側車室は京都行き上り列車において進行右側が1人掛け、京都側車室は左側が1人掛けである。そして、どちらも1人掛け席をA席とし、2人掛け席はBC席となる。つまり前後車室でABCの並びが逆転するので、1人掛け席で好みの車窓を楽しみつつ過ごしたい場合など番号に留意する必要がある。予約時に「座席を選択する」で指定できる。
ドアを中央にして車室を分けた理由は、一つは車両の姿としての差別化、そして乗降口が1か所という構造では片端に寄せるより中央の方が乗降性が高いこと、さらにコンパクトな空間が実現すること−との説明だった。
阪急電鉄において、次期京都線特急車の導入と抱き合わせつつ、座席指定車両の具体的検討を始めたのは2020年の後半だった。今回阪急では、コンセプトを煮詰めることにじっくり1年の時間をかけた。まずは京阪神在住者2千人にWebアンケートを行い、さらに指定席車両の利用意向が高い人々にインタビュー調査を重ねて方向性を見出した。やはりニーズが高いのは混雑する通勤時で、したがってメインターゲットはラッシュ時の通勤客、属性としては20歳代〜50歳代の男性、20歳代・30歳代の女性となった。そして今の時代、公共空間の中でも個の空間が欲しいという要求が高いことから、「プライベート感覚」がコンセプトの柱に据えられた。ちょうど開発がコロナ禍の最中だったため、非接触への欲求がとても高まっていたこともある。
その具現化がプライベースなのだ。
試乗会の際、「阪急電車の声の人」こと下間都代子氏は、「プライベースは、”日常の移動時間をプライベートな空間で過ごす自分時間へ”をコンセプトとし、プライベートと、英語で場所を表すプレイスを掛け合わせた名称です。阪急電車らしさはそのままに、お客様に快適な自分時間を過ごしていただけるよう、プライベート感と快適性を兼ね備えた上質な空間づくりを目指したデザインとしています」 と説明。外観やインテリアの特徴を述べ、阪急電車を象徴するマルーンにゴールドラインやステンドグラスをイメージした乗降ドアの窓などで特別感を持たせ、デッキ部の壁面は木目調と大理石調のデザイン、柔らかなダウンライトで上質さを演出したと伝えた。
座席は座面幅と足元を広く取った。リクライニングに加えて周囲からの視線を遮る大きなヘッドレストや2列席にはパーティションを設け、個々にリラックスできる空間を感じてもらえるよう、細部までこだわったそうだ。
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