今こそ「世阿弥」現代人が共感する600年前の言葉 未来への不安に「答え」を見出すヒントがある
そんな未来に対する不安の多い昨今、答えを見出すヒントが世阿弥の言葉にはあるのではないでしょうか。未来に対する不安は何千年も前からある人類の悩みの一つです。
日本の伝統文化を次世代に残したいという方も増えているものの、最先端だった 「能楽」は「難しい」「敷居が高い」などが合言葉のようになっています。
未来に負債を残すことと、託すことは大きく違います。次世代に伝統文化を伝えるためには現代の同世代の人が興味を持つことが第一の解決法だと私は考えています。
ところが次世代に残したいと思う方々も、いざ能楽堂に足を運ぶだけでもなかなか実行に移せないものです。
そうしたなか『風姿花伝』が経営哲学、生き方の指針として語られることも増えてきました。またNTTで開発されたLLM(大規模言語モデル)が日本独自の「tsuzumi」と名付けられています。
大ベストセラーとなった『国家の品格』にも国際人とは外国語を話せる人のことではなく、自国の文化を知る人のことだという記述があります。
世阿弥の言葉には、見聞心(視覚、聴覚、体感覚)など、NLP(Neuro Linguistic Programming:「神経言語プログラミング」)を始めとする海外の最新心理学とも共通する部分が多いのも特徴です。
原文が日本にあり、実際にその哲学を土台に600年間途切れることなく上演されている能楽は世界最古の生きた文化です。600年後の私たちに残してくれた世阿弥の哲学や世界観を知ることは、バーチャルとリアルが交錯する現代人の大きな生きる力になると考えます。
とくに人の心に関することはタイムトラベルで現代を見てから記載したのではないかと思われるほど、現代の自己啓発書に通じるところがあります。これが秘伝として伝承されてきたこと、それが公開されているにもかかわらず古語であるために敬遠されているのは非常にもったいない状況だと思っています。
見えない世界を語る
能楽は室町時代に現代の様式になったと言われています。その中でも南北朝時代という日本国内が混乱している時代に現代の能の原型ができました。
観阿弥は南北朝時代の始まりに生まれました。その30年後、世阿弥が生まれています。混乱の時代を生きただけでなく、その後の時代の権力者のフィルターを通り抜けても残ってきた生命力が強い作品だけが200曲以上残っています。
世阿弥の作品も地震や自然災害を象徴する神や龍神の出現、幽霊が思いを語るものなど幽玄の世界に進んでいきます。
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