決裂したTPP、次に大筋合意したら起きること 農業へのダメージ、消費者が受ける恩恵は?

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反面、「バターの輸入品価格は国産の3分の1。コメや肉と比べ品質による差別化も難しい」(本間正義・東京大学教授)と、NZの要求を丸のみするわけにいかない事情もあった。米国やカナダもNZ案を拒否。これがもう一つ難航していた、「新薬」のデータ保護期間をめぐる対立にも波及したのである。

製薬メーカーの強い米国が12年間を要求したのに対し、ジェネリック(後発医薬品)活用で医療費を安く抑えたいNZやマレーシアは5年間を主張。日本は妥協点として8年間を提案し、一時は双方に歩み寄りの機運も生まれていた。が、NZは「乳製品の要求が通らないなら新薬で譲歩しない」と強硬姿勢を崩さず、合意は絶望的となった。

会見で記者から交渉離脱の可能性を問われると、グローサー氏は「NZはTPP交渉を始めた最初の国の一つ。われわれは交渉から離脱しないし、追い出されもしない」と気色ばみ、TPPの前身であるP4協定からのメンバーであるプライドをのぞかせた。

今後は8月末から9月以降の会合開催が水面下で調整される。実施されれば、これが最後の会合となろう。2016年11月に大統領選挙を控える米国では年明け2月から予備選挙が始まり、超党派での協力が難しい。米国内でTPPの承認手続きにかかる期間を考慮すると、今秋に大筋合意できなければ、米国で新政権が本格稼働する2年後まで、TPPは宙に浮くとみられる。

保護政策なら衰退へ

ただ7月末の会合では、多くの分野で進展もあった。

甘利氏は、「もう一度会合が開かれればすべて決着する」と、願望も込めてコメントしている。たとえば12カ国共通のルール作りでは、一定額以上の「政府の物品調達」や「公共工事」の国際入札を義務づけ、海外企業を公平に扱うこととした。新興国のインフラ投資案件では、日本企業の受注する機会が増えることも期待されている。

TPP参加国のGDPの約8割を占める日米の間でも、難航していたいくつかの品目では、合意のメドが立っていた。日本が攻める立場の「自動車部品」の関税2.5%では、即時撤廃を求める日本と、時間をかけたい米国とで隔たりはあったが、撤廃する方向では一致している。

片や日本が守る立場の農産品では対応が分かれた。牛肉と豚肉では、早くから関税の引き下げ率などで、日米が大筋合意。一方で、日本が“聖域”と位置づけているコメに関しては、様相が異なる。

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