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ウクライナ軍がロシア領内反攻に成功した理由 現地キーウから見たウクライナ軍大反攻の真実

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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これを裏付ける情報として、ゼレンスキー氏は2024年8月13日に開催された「最高軍事関係閣僚会議」でこう強調した。「今われわれは、戦争で主導権をつかんだ侵攻開始直後のように団結し、効率的に行動しなければならない」。

つまり、ゼレンスキー氏としてはアメリカからの武器支援が一時的にストップした2024年当初以来、ロシア軍に奪われていた主導権を取り戻すことを狙っているとみられる。

ウクライナ部隊はすでにクルスク州の経済的要衝スジャを掌握した。スジャはロシア産ガスを一部の欧州諸国へ送るためのパイプライン施設があり、ここをウクライナが掌握すれば、プーチン政権に大きな圧力をかけることになる。

さらに、ウクライナ政府は市民を人道的に扱うと宣言し、クルスクに治安維持にあたる軍司令部を設置する考えも表明した。

2024年11月の平和サミットを前に

こうした動きの狙いはただ1つだ。2024年11月にゼレンスキー氏が計画している第2回平和サミットまでクルスク州の占領を続け、同サミットでロシアに対しウクライナにおける占領地との交換を呼びかけるとみられる。

もちろんこれまで違法に占領された東部・南部・クリミア半島の返還実現に向けては、クルスク州の占領だけでは足りないだろう。上記の占領地を部分的に奪還しようとする可能性もありうる。プーチン政権もこの狙いを掌握しているとみられる。

では、なぜクルスク州を標的にしたのか。その最大の誘因は、他の占領地に比べクルスク州ではロシアの精鋭部隊は配置されておらず、守っているのは実戦経験の乏しい徴集兵部隊だからだ。

さらに、クルスク州には大きな経済上の権益がある。クルスク原子力発電所や、前述したようにロシア産天然ガスを一部の欧州諸国に運ぶガスパイプラインの重要施設がある。それゆえに、ここを占領すれば大きな戦略的価値が十分にある。

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