脳の権威が断言「AIを使ってもバカにならない」 米国脳トレーナーが教えるAIとのつきあい方
電卓は知識の代わりになりうる。電卓が1台あれば、九九の表を暗記する必要もなければ、3桁の数を2桁の数で割る方法を覚える必要もない。だが、電卓が推論に取って代わることはない。あこがれのギターの購入資金を貯める方法を割り出すには代数が有効だと知らなければ、まずもって電卓に正しい数字は打ち込めない。
同じように、AIは膨大なデータのなかから、こちらが求める情報を瞬時に抽出して示してくれる。しかし、AIにそもそもどう言って情報を抽出させればいいのか、さらには手にした情報をどう扱えばいいのかを知らなければ、その情報は使いものにならない。
世界的心理学教授の見解
ベストセラー書籍『やり抜く力』(神崎朗子訳、ダイヤモンド社)の著者で心理学教授のアンジェラ・ダックワースは、『ロサンゼルス・タイムズ』に掲載されたAIに関する文章でこう述べている。
いわく、AIは「知ることと考えることがいかに別物であるかを見事なまでに体現している。“知ること”は事実を記憶にとどめることであり、“考えること”はそうした事実に合理的な理由を当てはめることである。チャットボット[注 AIを利用して自動応答を行うプログラムやシステム]は、インターネット上のあらゆることを知っているが、そのじつ考えることは一切していない。
言い換えれば、教育哲学家のジョン・デューイが1世紀以上前に“反省的思考”と呼んだこと、すなわち、“信念や知識の類いだとされるものを、それを支える根拠に照らして能動的に、持続的に、また注意深く考えること”は、AIにはできないということだ」。
「テクノロジーはずいぶん前から、暗記した知識の重要性を軽視している。周期表の14番目の元素を、世界で10番目に長い川を、アインシュタインの誕生日を、検索すればわかる時代になぜ覚えるのかというわけだ。その一方で、考えることの経済的インセンティブは、知ることのそれとは対照的に高まっている。現代の平均的な学生が、1世紀前の学生より思考力では勝るのに、知識は少ないとしても驚くに当たらない」
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