(第20回)垂直統合の巨大企業を生んだ20世紀型技術

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 第二の要因は、日本企業の閉鎖的な特性、あるいは日本社会の非流動性が垂直統合に合っていたことだ。組織間の流動性は極端に低い。「蛸壺」が形成されるのは、そのためだ。

こうした条件下では、専門家が生まれず、ジェネラリストが優越する。経営について、特にそれが顕著だ。組織のトップは、その組織についての専門家であり、どこでも通用する専門家ではない。そもそも日本では、経営が専門的職業だという認識すらない。日本企業のトップにいるのは組織の階段を上り詰めた人であり、組織を掌握できる人だ。

ところで、日本の垂直統合とアメリカのそれでは、差が見られる。アメリカの垂直統合は一つの企業の中で実現されるのに対して、日本の場合には、資本関係や技術提携のある企業集団が形成される。グループ間では人的関係も深い。自動車メーカーの場合、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードは単一企業だが、日本では系列下請け企業との企業グループだ。

「トヨタ」はトヨタ自動車だけで成立しているのでなく、トヨタグループとして活動を行っている。「ケイレツ」は少なくとも90年代ごろまでは、世界でも通用する概念だった。

大金持ちが日本では生まれない

日本とアメリカの違いは、資産の保有状況にも見られる。

19世紀末から20世紀にかけてのアメリカで、鉄道、鉄鋼、自動車、石油事業にかかわった人々の中から、巨万の富を蓄積した大富豪が誕生した。

『The Wealthy 100』という本の中で、著者らは個人の資産(歴史上の人物については遺産)を当時のGDPと対比することによって時代の違いを標準化したリストを作成した(そのリストはいくつかのブログで見ることができる)。そのうち何人かを表に示す。

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