(第20回)垂直統合の巨大企業を生んだ20世紀型技術

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 垂直統合をもたらした大規模技術は、20世紀技術の特徴である。第2次世界大戦後も、原子力と宇宙開発を中心に技術体系の巨大化が進んだ。ここでは、究極の垂直統合経済体制である社会主義経済がその特性を発揮して優れた成果を挙げた。

60年ごろまでの世界で、ソ連が強かったのは決して偶然ではない。また社会主義が一般的な意味で優れた制度であったからでもない。当時の技術の性格がそのような経済体制に適合していたことの結果であったと考えることができる。

コンピュータの分野でも巨大化が進展した。IBM360の開発には、原子爆弾のマンハッタンプロジェクトを上回る資金がつぎ込まれたといわれる。メインフレーム・コンピュータは1台数億円する高価な機械であり、大企業でしか使えなかった。したがって、大企業と中小企業の生産性の格差は、超えられないほど大きかった。

垂直統合をもたらす技術以外の要因

戦後日本の高度成長は、垂直統合型企業によって実現された。事業分野は、鉄鋼、電機、自動車、それに電力だ。それは先述したように、60年ごろまでの技術体系が垂直統合的経済活動を要求したからだ。

ただし、日本で垂直統合型企業が支配的になったのは技術的要因だけによるものではない。次の諸条件が重要な意味を持った。

第一は、戦時経済体制の影響だ。前回述べたように、電力の地域独占体制は、戦時経済改革の直接の結果である。また、全国紙もアメリカにはない。これも戦時経済体制における「1県1紙主義」がもたらしたものだ。このいずれにおいても戦前の日本では、多数の小企業が競争を行う自由主義体制だった。

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