コーセー、爆買いを「おまけ扱い」する理由 第1四半期の営業利益は3倍増

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創業家で4代目社長の小林一俊氏。2007年から社長を務めている(写真は2011年)(撮影:今井康一)

確かに、小林一俊社長が2008年から着手した国内化粧品ビジネスの再構築が奏功し、訪日需要を除いても、国内は2~3%という化粧品市場全体の伸びを上回っており、収益構造は観光客需要ににおんぶにだっこではない。

ただ、2013年に起きたカネボウ化粧品の白斑問題以降、「美白化粧品では、コーセーがカネボウから離れた客の受け皿となっている」(大手化粧品専門店関係者)という見方もある。一方、富士フイルムやロート製薬など異業種からの参入も相次ぐ。国内は訪日需要を除いたベースでいかに着実な成長を続けられるかがポイントだろう。

 海外事業の収益は停滞気味

目下、国内に加えて海外事業の強化にも余念がない。昨年4月に買収した米国のタルト社は営業利益が7割増と好調で、店舗数の拡大も続く。だが、同社を除くと海外の売上高は全体の1割に満たず、採算も停滞気味。業界首位の資生堂の海外比率が5割を超すのと比べると、大きく見劣りする。

そこで2015年度からの3カ年は、競争力のある「グローバルブランド」の育成期と位置づけている。現在は不調の中国事業の構造改革の真最中だ。「メイドインジャパン」ブランドが好評なため、2014年度は現地の生産拠点の閉鎖を断行。採算の低い店舗は閉め、収益性の高い店舗で現地店員に日本流の質の高いカウンセリングの習得を進めている。年々、存在感が高まるネット通販にも注力し、中国の売上高に占める割合は2割まで高まった。

中国での再構築を進めつつ、欧州でのコスメデコルテの拡充、アジアでのブランド確立などでどこまで実績を上げられるか。中期3カ年の計画は初年度から好調だが、爆買いを”脇役”として扱い、国内収益力の強化と海外展開で飛躍を遂げられるかが、今後を占う試金石となりそうだ。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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