堀内:ありがとうございます。次にアメリカの大学と日本の大学、そしてイギリスの大学の比較について、おうかがいしたいと思います。先日、東京大学の「カレッジ・オブ・デザイン」について東大総長である藤井輝夫氏にお話をうかがいました。
昨年、東北大学が「国際卓越研究大学」に認定されたのですが、東京大学はこの認定を受けることができませんでした。こうしたこともあって、今年の目玉として、すべての授業を英語で行う文理融合型の5年間一貫の「カレッジ・オブ・デザイン(仮称)」を2027年の秋から始めるということを打ち出しました。
また藤井総長自身が千葉の柏の葉にあるラグビースクールジャパンの視察に行かれて、やはりカレッジ、つまり学寮をつくるべきだという印象を強く持たれたようです。すべての授業を英語で行い、5年間で修士まで取れますといって海外から優秀な学生を集めようというのですから、本郷界隈のアパートを自分で見つけてくださいというわけにはいかないと思います。
また、学寮というのは単なる住まいではなく、大学の競争力にとってきわめて重要な意味を持っているので、欠かせないだろうと思います。
フェイフェイ:その通りだと思います。
堀内:東大をはじめとして、日本の大学が競争力というときに、その重心はどうしても学業のほうにあって、キャンパス運営などはあまり手が回らないのですね。つまり、学生の生活や学ぶ環境が重要であるという認識が希薄なのだと思います。
そうしたことも含めて、日本の大学とイギリスの大学の違い、それからもう一つはイギリスの大学とアメリカの大学の違いについて、フェイフェイが感じていることを聞かせていただきたいのですが。
伝統的なハウスシステム
フェイフェイ:大学の話の前に、伝統的なカレッジについてお話させてください。実はラグビー校とオックスフォードが共通しているのが寮の制度なんですね。これはハウスシステムと言われています。
オックスフォードでは、30以上ものカレッジと呼ばれる寮があり、ラグビー校にもハウスという名称で15の寮があります。もともとナレッジ・トランスファー(知識の伝達)という意味では、ラグビー校はラテン語をはじめ基礎科目の知識を先生が生徒に授けるという、知識を学ぶための学校でした。
それが有名になって、ロンドンなど遠方からも多くの家族が子弟をラグビー校に送るようになったときに、その近隣に住んでいた地元の家庭に自分の子どもを預け始めたというのが、ハウスの起源です。当初は、学校は学校、寮は寮という別々の形をとっていました。