JAL出身社長解任劇から1年、「空港施設」の現在地 初のプロパー出身社長が就任2年目で語った
空港施設にとってJALとANAは大株主であると同時に主要取引先でもある。コロナ禍ではJALやANA向けに賃貸用不動産の賃料や冷暖房の減免を空港施設が行っていた。そのような関係にある2社出身の取締役を今年も再任案として株主総会に出したことを八田氏は問題視している。
また空港施設は、2028年度までに事業利益の5割を空港外で稼ぎ出す方針を掲げる。目下、注力しているのは、オフィスビルを取得・改修して売却する回転型不動産事業だ。JAL・ANA出身者の役員選任はこの経営戦略に合致したものなのだろうか。
田村社長は、「多くの機能を有する羽田空港が存在する限り、当社が担う役割は果たしていきたいと考えている。当社の企業価値向上にとってJAL・ANA出身の取締役は必要」という旨の主張をする。また「新しい事業展開をできる人材は集めている」とも語った。
社外取締役の再任に残る疑問
八田氏は社外取締役についても疑問を呈する。
「(国交省OBの人事介入など)問題のあった役員人事に対して、役割を担っていない就任年限の長い社外取締役が再任されている」
八田氏は明言しなかったが、空港施設の社外取締役は3人でうち1人は今年新たに選任されたばかりだ。つまり、2015年から社外取締役を務める杉山武彦氏と青山佳世氏を指していることになる。
空港施設では2019年に取締役候補者の指名などについて協議・選定を行う指名委員会が設置された。その委員長を務めたのが杉山氏で、副委員長は青山氏だった。国交省OBの天下り問題を事実上、認めてきた。
田村社長に八田氏の指摘をぶつけると、「一定のプロセスを経て再任されている方ですし、われわれの事業展開に必要」と述べた。
八田氏は、「ガバナンス改革は途上にある」とする一方で、田村社長には次のように期待を寄せている。「初のプロパー社長誕生で社員のモチベーションも高まり、高い自立性を備えた上場企業として、企業価値向上に向けた経営戦略を構築し、ワンチームでの業務遂行を期待したい」。
株価は8月9日の終値で562円。PBR(株価純資産倍率)は東証が求める1倍を大きく下回っており0.5倍程度だ。上場企業である限り、田村社長は八田氏の指摘や市場からの評価に向き合う必要があるだろう。
■田村滋朗社長インタビュー
――JALとANAからの天下りを取締役のポストに受け入れるメリットを教えてください。
当社の企業価値向上と成長に必要な知識を持った人材だからだ。
飛行機を飛ばすために多くの人や施設、航空機が関わっている。われわれは長年にわたって航空関連施設などを安定的に運用し、(航空会社などに)提供をしてきた。
これは非常に重要なポイントで、そこに当社の企業価値がある。羽田空港が存在する限り、当社が担う役割をまっとうしていきたい。JALとANA出身の取締役が今後、減ることはあまり想定していない。
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