日本がフィリピン軍に練習機の供与検討、海上監視に利用=関係者 海上監視に利用

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[東京 6日 ロイター] - 日本がフィリピン軍に対し、訓練用の航空機の供与を検討していることが明らかになった。海上の監視活動に使えば、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンの防衛力強化につながるとみている。

他国軍の能力支援に、自衛隊の中古装備を輸出する初のケースとなる。

<レーダーと目視で警戒監視>

日比両政府の関係者によると、検討されているのは、海上自衛隊が操縦士育成に使用している練習機「TC90」。もともと米ビーチクラフト社が開発したビジネス機で、高い軍事能力はない。しかし、日本の関係者は「レーダーを積めば偵察機として使える」と話す。

南シナ海で中国と緊張が続くフィリピンは、海の監視能力を高める装備の供与を日本に求めており、特に対潜哨戒機「P3C」に強い関心を示している。西太平洋に抜けようとする中国の潜水艦をけん制するのが狙いだが、P3Cは収集した情報の解析などに高度な運用能力が必要なことから、扱いの容易なTC90が俎上(そじょう)に乗ってきた。

別の関係者は「レーダーと目で見て写真を撮ってくる、という警戒・監視に使える。潜っている潜水艦は無理だが、水上艦艇なら見ることができる」と言う。

検討はまだ初期段階とみられ、フィリピン国防省の上層部は日本側から正式な提案を受けていない。ガズミン国防相はロイターの取材に対し「(TC90の供与は)承知していない」としている。

フィリピンとの防衛協力を進める日本の防衛省は「TC90、P3Cを含め、わが国とフィリピンとの間における具体的な防衛装備・技術協力の内容は決まっていない」と回答した。

日本は親日のアキノ大統領の任期が終わる来年6月までに、フィリピンとの関係をできるだけ強化したい考え。安倍晋三首相とアキノ大統領は今年6月の首脳会談で、装備輸出を可能にする協定の交渉を開始することで合意した。

<中古装備の供与に壁>

問題は、国有財産を無償や低価で他国に渡せない財政法の縛りが日本側にあること。政府内では、自衛隊の中古装備の供与が同法の対象外となるような法的な手当てを検討する案や、適正な中古価格で売却する案などが出ている。

他国軍への補給を可能にする物品役務相互提供協定(ACSA)や、国連平和維持活動(PKO)の派遣先に装備を置いて帰るのは、別途法律があるため財政法の例外扱いにされている。

南シナ海の岩礁を埋め立て、軍事拠点化を進める中国の活動に、周辺諸国は警戒を強めている。8月4日からマレーシアで始まった東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議でも、主要議題に取り上げられた。同海域を重要な海上交通路(シーレーン)とみる日本は、関係各国の海洋安全保障の能力向上を支援する方針を改めて表明した。

*写真を差し替えます。

(久保信博、ティム・ケリー、マニュエル・モガト(マニラ) 編集:田巻一彦)

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