ニューヨークの株価を後追いする日本の株価--リチャード・カッツ
海外投資家が株価を先導
何が状況を変えたのだろうか。
最大の変化は、日本の金融市場で規制緩和が進み、その効果が表れてきたことだ。これにより、海外投資家はかつてなかったほど東京株式市場への参入が容易となった。海外投資家が保有する株式(株価ベース)の割合は、80年代後半の4%弱から、この5年間においては25%以上へと急上昇した。
しかし、保有割合だけを見ていたのでは、海外投資家の役割を過小評価することになる。海外投資家が日々の売買高に占める割合は、その保有割合をはるかに上回っている。ここ数年間で見れば売買高の約半分が、今年初めから現時点までの売買高の67%までもが、海外投資家によって占められている。彼らは「スイング」投資家になった。つまり、非常に多くの場合、市場は海外投資家の売買動向に影響されて変動するようになったのだ。
当然のことながら、海外投資家は、日本の株式を売却してその売却益を自国の通貨に換算した場合の日本株の価値に関心がある。複数の国々での投資を比較する際には、日本の株価の動向だけではなく、為替レートの動きにも配慮しなければならない。だからこそ、ドル換算して見た場合の日経平均株価は、もともとの円で見た場合よりもずっと、S&P500との相関度が高いのだ。
株式市場の連動が強まったのは日本だけの現象ではない。ほかの先進国でも同様の傾向が見られ、これは金融のグローバル化の一側面だ。S&P500、英国のFTSE(ロンドン株価指数)、ドイツのDAX(ドイツ株式指数)にも、似たような相関が見られる。
08年から11年にかけて、ニューヨーク、ロンドン、フランクフルトの株式市場の相関度は、95%と非常に高かった。日経平均株価をドルに換算して比較すると、ロンドン株価指数との相関度は92%、ドイツ株式指数との相関度は89%だ。これらはいずれも、00年代初めの相関度よりもはるかに高い。