トランプ政権なら円相場や日本株はどうなるのか 移民の抑制でアメリカは「インフレ再燃」も

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トランプ氏はエネルギー政策について、天然ガス採掘やパイプラインの整備・拡大をするために各種規制を緩和して生産量を増やし、エネルギーコストを一段と引き下げると繰り返している。こうした政策の実現可能性はともかく、トランプ氏の誕生がより強く意識されれば、それだけで原油価格(国際価格)が下落しても不思議ではない。

実際、前トランプ政権時には任期後半にかけてアメリカの原油生産量が急増する中、原油価格が下落する傾向にあった。

もちろん今回もそうなるかは不透明だが、トランプ政権がエネルギー価格抑制に力を注ぐことが確実視される状況で、「トランプ=インフレ再燃」と直接結び付ける思考には距離を置いた方が良いかもしれない。言うまでもなく、エネルギー価格低下は日本経済にとって恩恵が大きい。交易条件改善によって企業収益は押し上げられ、日本株に好影響を与えるだろう。

トランプ政権誕生での中長期的なリスク要因とは?

最後にトランプ政権が誕生した場合に想定すべき中長期的なリスク要因に触れておきたい。それは移民の抑制によるインフレの再燃だ。CBO(アメリカ議会予算局)の試算によると、移民流入数は2023年と2024年にそれぞれ年間330万人程度となった後、2025年以降は漸減し、第一生命経済研究所の試算によれば2027年には110万人程度になる。

また同研究所は、トランプ政権が移民抑制に動いた場合、2027年における移民の純流入はプラス50万人と第1次トランプ政権(2019年:プラス42万人)と同程度まで低下すると試算している。

さて、こうした移民の減少が為替にどういった経路を通じて波及してくるのだろうか?その点、筆者は「安価な労働力」という視点に重きを置いている。現在も続くインフレの根幹にあるのは、人手不足に起因する労働コストの高止まりだが、それを快方に向かわせているのは移民という労働力である。すなわち移民の流入は労働市場の逼迫を和らげ、賃金上昇圧力を減じ、インフレ沈静化に貢献していると考えられる。

したがって、移民抑制は「労働供給の減少→賃金上昇→インフレ再加速→引き締め的な金融政策の長期化→アメリカ株下落」という結果をもたらすだろう。その場合、世界的な株価下落に発展する可能性がある。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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