トランプ政権なら円相場や日本株はどうなるのか 移民の抑制でアメリカは「インフレ再燃」も
7月中旬から8月にかけて半導体関連銘柄が世界的に調整する場面があった。指数の構成において半導体製造装置銘柄の存在感が大きい日経平均株価は、あっさり4万円の大台を大きく割りこんでしまった。半導体関連銘柄の急落のきっかけとなったのは、バイデン政権が半導体製造装置の対中輸出規制を同盟国に対して強化するとの報道だった。
そこで半導体などハイテク製品を巡る対中規制についてトランプ氏の考えが気になるところだが、筆者の答えは「共和党政権であろうと民主党政権であろうと大きな流れは変わらない」である。そもそも対中規制の強化は共和党と民主党にとって数少ない政策的合意事項であり、どちらの政権でも対中規制に日本株が翻弄される展開は今後も続くことになるだろう。
ここで半導体製造における中国の需要度を確認するために、日本の貿易統計で半導体製造装置の地域別輸出を確認すると、中国向けは全体の約5割を占める重要な仕向け地となっている。アメリカの規制強化を念頭に置いた駆け込み需要によって輸出が一時的に押し上げられている面もあることから、直近の存在感は割り引く必要があるが、それでも対中規制が本格的に強化された場合は相応の下押し圧力が働きそうだ。
日本経済に恩恵のある政策も
もっとも、こうした規制強化は中長期的にはサプライチェーンの再構築を通じた新たな需要を生み出すことから、決して悪いことばかりではない。「中国向け輸出」と言っても、そこには中国国内に工場を有する台湾や韓国の企業が含まれていることから、仮に輸出規制が著しく強化された場合は中国の国外に新たな工場が必要になり、そこで需要が発生するためだ。日本における半導体工場の新設もその一環と見なすことができるだろう。このような投資案件が多く生まれれば、それはそれで半導体需要の増加につながる。
また、トランプ氏と言えば、やはりエネルギーであろう。同氏が掲げる政策は、拡張的な財政政策、関税、移民抑制(安価な労働力が減少)などインフレ再燃を懸念させるものが多い中、エネルギー政策はインフレ沈静化に貢献しうる。現在、アメリカの原油生産量は日量1300万バレル強とコロナ禍前の水準を回復し、すでに世界最大となっている。こうした環境下、トランプ政権が誕生すればさらなるエネルギーの増産が考えられ、エネルギーコスト低下が実現する可能性はある。
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