ワールドの「決断」を遅らせた創業家の体面

なぜリストラは2段階に分けられたのか

状況が暗転したのは、2008年のリーマンショック以降です。景気の悪化とともに消費増税などで消費者の財布のヒモが固くなる中、ユニクロなど低価格が強みのファストファッションの台頭にも押されるようになりました。富裕層や訪日外国人の消費は活発化しましたが、彼らの目当ては高級ブランドなど高額品。中価格帯中心のワールドに恩恵は届きません。

リーマン前までワールドの成長を牽引していたSCへの出店戦略も曲がり角を迎えました。開業初年度は盛況でも、2年目以降は不振に陥ることもしばしば。近隣に新しい店舗が建設されるなど、SC同士の競争も激化して、最高益を出した2007年3月期から出店を加速しましたが、皮肉にも不採算店を増やす結果となり、利益は急減していったのです。

実質は営業収支トントンの寸前まで悪化

直近決算の2015年3月期(IFRS=国際財務報告基準に変更)は、本業の儲けを示す営業利益が52億円。これはIFRS移行がなければ、のれん償却の約40億円分が、さらに利益を押し下げていたことになるようで、ピークだった2007年3月期の営業利益213億円に比べると、収益力は格段に落ち、実質的には営業収支トントンの寸前といっていいほどになっていました。

寺井会長が社長時代に悩んでいたように、近年のワールドは店舗閉鎖やブランド廃止だけでなく、人員削減にも手をつけなければならないほど、業績は悪化していました。むしろ、一般的な企業の業績悪化に対するリストラと比べると、手を打つタイミングが遅れたといえなくもありません。

そこで白羽の矢が立ったのが、現社長の上山氏です。上山氏は東京大学経済学部を卒業後、住友銀行を経て、スーパーの長崎屋、英会話学校のGABAの再生に尽力してきた人物で、長崎屋では計画よりも12年早く更正手続きを終結させました。ワールドには2013年に常務執行役員として入り、2014年にCOOを務め、今回、創業家以外で初の社長登用となりました。

「絶対にリストラはしない」と公言してきた寺井前社長にしてみれば、みずからが人員削減を打ち出しにくい状況だったのでしょう。創業家の「しがらみ」とは別次元で代わりに大ナタを振るえる上山氏のような再生請負人が必要だったのです。

余談ですが実は、もう一人の社長候補がいました。水留(みずとめ)浩一氏です。東京大学理学部出身で、企業再生機構から、日本航空(JAL)の副社長として再生に尽力し、2013年にワールドの専務執行役員に就任しました。ほぼ同時期にワールドに入った2人ですが、水留氏は2014年に退社。回転寿司大手「あきんどスシロー」の社長に転身したため、残る上山氏に社長へのレールが敷かれました。

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