ワールドの「決断」を遅らせた創業家の体面 なぜリストラは2段階に分けられたのか

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「第2段階」の人員削減を冷静に考えてみると、なぜ5月18日に店舗閉鎖と併せて対外的に発表しなかったのか、ちょっと解せません。というのも、各種報道によればワールドは今回の希望退職を経て年間30億円の人件費を削減する算段のもよう。業績改善はもともと店舗閉鎖だけでは不十分だったのです。

実は希望退職は、店舗閉鎖とブランド廃止を大々的に公表した2日後の5月20日に社内発表されています。ワールドはそれを6月12日付で提出した有価証券報告書に記載していました。

ただ、大手をはじめメディアの多くはそのことに気がつかず、大きく報道されたのは6月27日以降です。ワールドは対外的に希望退職の事実を確かに「公表」したものの、記者会見やプレスリリースのように自らが世の中に大々的に知らしめることは、この時点でしていませんでした。今もワールドのホームページには、希望退職のリリースは掲載されていません。

人員削減はなるべく目立たないように…

なぜ、こんな「2段階」に分ける必要があったのでしょうか。人員削減はなるべく目立たないように、ひっそりと進めていたように見えます。実は、ここに上山社長がトップに就くまでずっとワールドに君臨していた創業家の「体面」がありそうです。

関係者からの証言によると、創業家出身で前社長の寺井秀蔵会長(代表権あり)はこれまで、社内の大きな会議では常に「絶対にリストラはしない」と明言していたといいます。ところが、ここ数年は気心の知れた少人数でのメンバーとの会話では、「いったい、何人が適正なのか」といつも問いかけては、悩んでいたようです。

ワールドの成長は1990年代に入って加速しました。1993年に国内でいち早く、商品企画から小売り販売まで手掛ける、SPA(製造小売業)へと転換。1990年代後半からは主力の百貨店に加えて、建設ラッシュだった商業施設(SC)向けの販路開拓に力を入れました。

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