TGV施設破壊で混乱、パリ五輪の「鉄道輸送」事情 地下鉄は運賃2倍に、市民はどうしている?

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鉄道への破壊行為は五輪開会式へ向かう世界各国からの訪問者の足を奪ったが、一方でパリ市民らは五輪開催地の地元から「脱出」した人が多い。パリに住む知人たちに、五輪が開催される中での夏の過ごし方について聞くと、異口同音に「交通の混乱や予期せぬ暴力行為などに巻き込まれるのは嫌」「街がごちゃごちゃするので、ここを離れる」という声が大勢を占める。

パリを含む首都圏・イル=ド=フランス地域では、五輪およびパラリンピック期間の9月8日まで、域内を走る地下鉄(メトロ)、バス、トラム、そして都心と郊外を結ぶ電車「RER」の運賃が一時的に2倍近くまで引き上げられている。普段ならメトロは1乗車2.10ユーロだが、期間中は4ユーロだ。

パリ メトロ
パリ市内を走るメトロの片道切符は、五輪期間中はほぼ倍額になる(筆者撮影)
RER C
市内中心部とベルサイユ宮殿最寄り駅を結ぶ郊外電車RER C線(筆者撮影)

これまでの夏季五輪は、開催都市内に1つのメイン会場を設けてそのエリアに競技施設を集める形で実施されることが一般的だった。一方、今回のパリ五輪は、市内の複数個所に仮設会場を設けた。市民が普段の生活を送っている場所に多くの観衆が押しかけることになるため、人流をいかにコントロールするかが課題となる。値上げはその一環だ。

期間中の地下鉄運賃はほぼ倍額に

五輪期間中の運賃値上げプランは2023年12月1日に発表された。この際は「パリを訪れる観戦客からぼったくるのか」といった批判が渦巻いたが、交通当局は片道乗車券の値上げと抱き合わせで、観戦客の便宜のために、首都圏域内の交通機関に自由に乗れる「パリ2024パス」を導入した。

このパスを使えば、競技会場をはじめ、パブリックビューイングが行われるファンゾーンのほか、郊外にあるシャルル・ド・ゴール、オルリーの両国際空港、ベルサイユ宮殿やユーロディズニーへも行ける。通常、この範囲をカバーするチケットは1日29.25ユーロだが、「パリ2024パス」だと16ユーロ、7日用は70ユーロだ。運賃を倍額にすることで「乗車の度に毎回切符を買う人々の行列」の発生を防ぎたい意向が見える。

paris gare de nord
五輪開催を記念する「PARIS 2024」の垂れ幕がかかったパリ北駅(写真:m_sports_suki)

市民の利用にも配慮はしている。月間および年間パスは値上げ対象外で、交通ICカード「ナビゴー(Navigo)」に定期券利用分のチャージを行っている市民は、大会期間中も引き続き利用可能だ。

また、パリでは伝統的に10枚綴りの乗車券「カルネ(Carnet)」が販売されており、現在ではナビゴーに読み込ませて利用する形になっているが、こちらも値上げ期間前までに最大3セット(30枚)分の購入が可能という措置が設けられた。値上げ前に購入したカルネは大会期間中にも利用できる。

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