星野リゾート、利便性重視のホテルに初進出 過去最大の投資で4施設を獲得

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立地や価格などを合理的に選ぶ観光客も多い(写真:s_fukumura / PIXTA)

星野佳路(よしはる)社長は「都市型ホテルに来る観光客を外せなくなった」と説明する。社長自身、長野の浅間温泉を訪れた観光客が、周辺の旅館ではなく松本市内のビジネスホテルに宿泊していることを知り、衝撃を受けた経験があるからだ。

観光庁の調査(2014年)によれば、日本全体で利用されている客室数のうち、宿泊施設のタイプ別に見ると実に74%が都市型ホテルだ(ビジネスホテル56%、シティホテル18%)。旅館は15%、リゾートホテルは10%にすぎない。

星野社長は「星野リゾート独自の市場調査によれば、地方都市のビジネスホテルでは宿泊者の半分強が観光客。立地や価格で選んでいる。地方都市への観光客は効率的に、その日やその季節に合った地方の魅力を観光したいと思っている」と話す。

 これまでと違う都市型ホテルをつくる

「都市型ホテルについては、まだまだ(私たちは)わかっていないことが多い」としながらも、星野社長は「星野としての都市ホテルブランド構想は持っている」という。「今の都市型ホテルでは、地域の情報が十分に伝わっておらず、観光客のニーズを満たせていないことがある。宿泊客もホテルが提供すべきサービスだとは思っていないのか、不満として出てくることはないが、私たちからすれば(宿泊客の)一日を演出するのは大切なサービス」。今後は、宿泊客にホテル周辺の情報を効果的に伝えるサービスに注力するようだ。

「今回の4物件はすごく面白いセットだった。(経営権のみの取得のため)運営への参画は制限されるかもしれないが、5~10年で見ると、しっかり取得しておくべきだと考えた」(星野社長)。「クラウンプラザホテル」のブランドはIHGが世界65カ国に展開しており、外国人への知名度もある。

2016年には高級旅館「星のや東京」の開業も控える星野リゾート。今回のANAクラウンプラザホテルへの経営参加は、同社がより多角的な総合ホテルグループへと成長していくための橋頭堡となりそうだ。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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