「最低賃金50円引き上げ」時代遅れの根拠なき議論 「経営者代表」を議論の主役にしてはいけない訳

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実際の引き上げ幅は、各都道府県での議論を経て決定されますが、全国加重平均が1054円を超えることが予想されます。これは過去の事例から、引き上げ幅が目安より大きくなることが多いためです。

「データに基づいた議論」ができていない

問題は、中央最低賃金審議会では経営者代表の意見がしばしば具体的なデータに欠けるため、議論が抽象論に終始することです。

たとえば「価格転嫁ができていない企業が相当数いる」との主張がありますが、具体的な企業数や業種ごとの詳細なデータが示されていません。このような主張には、統計的なデータが不可欠です。

「価格転嫁ができていない企業が相当数いる」との発言には、2つの問題があります。

まず、「相当数いる」とは具体的に何社なのかが示されていません。356万社ある中小企業の中で、どの程度が価格転嫁できていないのか具体的なデータがなければ、無責任な発言となります。

次に「価格転嫁ができていない」と言われても、どの業種で何%できていないのかを具体的に示す必要があります。ここではエピソードではなく、統計的なデータが不可欠です。

さらに経営者代表は、物価上昇の影響を理由に賃金は上げられないと主張していますが、それは労働者に物価上昇の負担を押し付ける結果となります。

今回の審議会では、経営者側は「中小企業に支払い能力を超えた過度な引き上げによる負担を負わせない配慮を」と主張しました。しかし、経営者側が主張する「中小企業の支払い能力」の具体的なデータを示していません。

中小企業も全体で見れば、大企業と同じように利益が最高水準を更新し続け、内部留保も増加しています。その中で、経営者側が「支払い能力」を持ち出すのであれば、その詳細を示すべきです。

中小企業は356万社もあり、最低賃金が1500円になっても対応できる企業もあるはずです。最低賃金がいくらになれば、どの業種のどの企業がどのような影響を受けるかを具体的に示すことが求められます。

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