日本の最高学府・東京大学はどう変貌するのか 東大総長・藤井輝夫氏が「変革ビジョン」を語る

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堀内:ありがとうございます。お考えのことがだいぶよくわかりました。もう一度整理させていただくと、そもそも論になるのですが、いま社会における大学の役割はどういうものか。この点について、東大ではどのような議論が行われているのでしょうか。

東大には大勢の先生方が集まっていて、これだけたくさんいらっしゃれば、やはり先生によって考え方が様々なのではないかと思います。一方の極では専門的な学問を究めて、人類の知に貢献するんだという伝統的な考え方をする方がいらっしゃいますし、もう一方の極では、大学というものは社会に積極的にコミットしていく必要があるという考え方をされる方もいらっしゃる。おそらく藤井総長は後者のほうのお考えだと思うのですが。

東大はどこへ向かうのか

東大としてはいまどのような方向に向かおうとしているのか。それは先ほど話が出た国際競争力の話にもなりますが、イギリスのタイムズが毎年発行している高等教育情報誌「Times Higher Education」で順位が何位だったかということにどれだけこだわるのか。アジアの大学はシンガポール国立大学や、北京大学、清華大学などが日本の東大の上に来ていて、東大の凋落ということが言われています。

これはきわめて資本主義的な話で、東大は日本では偏差値が一番高いからすごいと言われます。それと、Times Higher Educationの順位が高いから偉い、低いからダメというのとすごく似ているようなイメージはあるのですが、そのあたりをどのように理解されていらっしゃるでしょうか。大学のそもそもの役割は何かというあたりを交えてお話しいただけませんでしょうか。

藤井:そうですね。もちろん専門知を追求することも大事ですが、長い時間、時代の変化の中で、社会へのコミットというか、社会との関係の中で貢献していく必要度が高まっているのではないかと思っています。東京大学は、法人化にあたって「東京大学憲章」をつくったのですが、ここで「世界の公共性に奉仕する」というミッションを掲げています。

当然、世界の公共性への奉仕の一環として専門知の追求はありますが、先ほどお話ししたようなさまざまな人類社会が直面している課題――気候変動もそうですし、パンデミックもそうですし、さまざまな地域の紛争もそうですけれども――に対して、どうすれば解決への手がかりを生み出していけるのか、あるいは提示していけるのか、という新しい知を生み出す機関としての役割も大学は担っているのです。

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